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国民民主党の暴走?迷走?


 国民民主党は、所得税減税で勤労世代の手取りを増やすと主張し、“補助金より減税”という流れを作りました。主張の方向性は正しいし、小難しい経済政策への世論の関心を高めた点でも、その功績は大きいと率直に評価できます。

 ただ、国民民主党の新たな主張である“消費税を5%に減税”にはちょっと首を傾げざるを得ません。

 そもそも今の段階で講じるべき経済政策には、物価高対策と対トランプ関税の景気対策という二つの観点が必要です。

 物価高対策という観点からは、特に食料品とエネルギーの物価上昇率が高く、また物価高に苦しんでいるのは中低所得層であることを考えると、消費税本体よりも、食料品に適用される軽減税率をさらに引き下げた方が効果は大きいと思います。消費税本体の減税は、高価な買い物をする高額所得者ほど恩恵が大きくなりますが、例えば高額所得者のブランドものの購入まで減税する必要はありません。

 次に、景気対策という観点からは、今の段階で消費税の税率を半減という大規模な景気刺激策が必要か疑問です。

トランプ関税で日本の景気がかなり悪くなる可能性はありますが、日米の関税交渉はこれからなので、今はまだ対日本の関税率がどれ位になり、どの程度景気が減速するか予測不可能です。それにも拘らず、税収の35%も占める消費税の税率を半分にまで下げて景気を刺激する必要性は説明できないと思います。

かつ、消費税を5%に減税すると、得をするのは高齢者層で、消費税減税を支持する現役世代はむしろ損をする可能性が大きいことも忘れてはいけません。

消費税収は社会保障の財源となっているので、消費税率を半分にすると、毎年の社会保障の財源が足りなくなります。それを補うには、現役世代が払う社会保険料を上げるしかないからです。

 つまり、もう社会保険料を払わないで良い高齢者層は減税の恩恵だけを享受できるのに対し、現役世代は減税の恩恵以上(=高齢者層の消費税負担分まで)を社会保険料の上昇という形で払うことになります。

 このように考えると、消費税を5%に減税という国民民主党の主張は、経済政策としての合理性は低いし、現役世代の手取りを増やすという党の大方針にも反しているように思えます。参院選での大勝利を意識し過ぎた暴走なのでしょうか、迷走なのでしょうか。。。

 探偵ファイルの読者の皆様が国民民主党の“消費税を5%に減税”をどう考えるか、ご意見を聞かせていただければと思いますので、よろしくお願いします!

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岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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