政界再編にまで発展するか
自民党総裁選で高市氏の勝利という、自民党関係者の多くも予想しなかったサプライズが起きたと思ったら、それから一週間も経たないうちに公明党が連立与党を離脱するという、更に大きなサプライズが起きました。
恥ずかしながら、私も総裁選は小泉氏の勝利、公明党が連立与党を離脱することはないだろうと予想していたので、どちらも外しました。
しかし、これで政局は一気に流動化してきました。当面は、来週開催される国会での総理大臣指名選挙が焦点となります。数の上では野党3党がまとまれば玉木氏が総理になりますが、野党がそう簡単にまとまるとは思えないので、今のところは高市総理が実現する可能性が高いのではないかと思います。
その場合でも、では自民党がどの野党の協力を仰いで首班指名を乗り切るかに注目です。数の上では、①公明+国民民主(共同で企業献金規制案を作成)、②維新、という二つの可能性があると思いますが、どちらになったとしても、秋の臨時国会は自民党が非常に議席数の少ない単独比較第一党となります。
となると、政界再編の可能性が一気に高まったと言えます。見方を変えれば、自民党は落ちるところまで落ちないと再生できないのを示しているのかもしれません。
政界再編が政策にどう影響するか
ただ、メディアは政界再編のことばかり報道しますが、大事なのは、物価上昇と国民生活の苦しい状況が続く中で、それが政策にどう影響するかです。
安倍総理の後継を自認する高市氏が自民党総裁になったということは、高市氏はアベノミクスを今の時代環境に合わせた形に正しく進化させるという使命を負っているとも言えるのではないでしょうか。
安倍総理は“日本的な間口の広い保守”(憲法改正や安保強化など譲れない部分は保守の信念を守る一方、その他の政策では右から左まで柔軟に取り込んだ)を確立しました。それに対し、高市氏の主張は、安全保障など政治思想は保守ですが、経済政策は財政出動中心で革新寄りなのです。
そう考えると、首班指名に向けて自民党がどの野党と連携するのかは、それが政策にどう影響するか、結果として高市氏はアベノミクスの進化形として正しい経済政策を講じられるか、そもそも有効な物価高対策を年内に講じられるか(今のままだと補正予算の年内成立は厳しい可能性あり)など、政策に大きな影響を及ぼすはずです。
だからこそ、政界再編含みの政治の動きは、単に高市氏が総理になれるかどうかのみならず、政策の方向性にも大きな影響を及ぼすという意識を持っておくことが大事ではないかと思います。所詮政治は手段であり、大事なのはその結果としてどのような政策が実現し、国民が幸せになれるかです。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。