●更新日 12/30●



“涙と感動の再開”の舞台裏 パート2


昨日の日記 のつづき

彼の母親は結婚前、放火によって父親を亡くしている。が、火事の時、彼女を助け出してくれた青年がいた。2人は結ばれることになり、やがて依頼者が誕生する。母親は、命の恩人と結婚したことになるわけだが、その後、彼女は警察から戦慄するような事実を聞かされたのである。

「あなたのご主人を放火の現行犯で逮捕しました。余罪を追及すると、以前、あなたの実家に火をつけたことも自白したんです」

依頼者の実父は、母親を救った美談の持ち主どころか、依頼者の祖父を焼き殺した殺人者だったのである。私は、依頼者の実母を探し出したが、母親は、風呂も便所もない4畳半ひと間の木造アパートで生活保護を受けながらひっそりと暮らしていた。

私は、ためらいがちに声をかけると、皺だらけの老婆は、

「夫は、とうの昔に死刑判決を受けて死んでいるはずです。あの男が逮捕された日に、私の人生は終わったんです。だから、私には夫も息子もいません。どうしても会いたいというのでしたら、お前を生んだ母親は、もう死んだと伝えて下さい」

と、力のない声で答えた。

私は、依頼者にありのままを報告した。彼は、喫茶店のテーブルに頭をつけて1時間ほど号泣していたのだった。

同じような例はほかにもある。養子に出された依頼者が、実父を探してみると、実は窃盗の常習犯だったのだ。彼の母親は結婚前に、長年貯めた大金を空き巣に盗まれて、途方に暮れていた。その時、金銭的に救ってくれた男が現れた。やがて依頼者の父となる男だった。初めから母親に接近する目的で、カネを盗んでいたのである。

行方調査の結末は、涙と感動の再会ばかりではない。その裏側には、人に言えぬ様々なドラマがある。世の中には、知らないほうがよかったこともあるのだ。







教訓ファイル 行方調査は協力者づくりから


行方調査の方法を伝授してみたい。最も難易度が高いターゲットは、カネ絡みで逃げている人物である。次は失踪後、10年以上経っている人。役所の転出証明は、一定期間しか保存されていないからだ。また10年も経つと、マンションの場合、管理人や近所の人たちは変わってしまう。聞き込みが困難になってくるのだ。

たとえば、ある町のパチンコ屋で働いていたという証言を得たとする。普通の人なら周囲のパチンコ屋を1件ずつ探し歩くことだろう。しかしプロの探偵は、まず同業者団体に当たる。情報が集中している所に問い合わせることが最も効果的だからだ。とくに男性の場合は、職種を変えることが少ないので、職業から割り出すのが早道かもしれない。

お気に入りの風俗ギャルがいなくなった場合は、店の子に聞き出すことになるが、何回か通う必要がある。間違っても1回目で成功するとは思わないほうがよい。1回目は、古株でブスな子を探し、気に入ったふりをして次にその子を指名する。3回目になって初めて、

「あの子、いまどこの店に行ったのかな。友達が気に入ってたんだ」

と何気なく聞いていく。大切なのは、協力者をつくることである。