●更新日 07/28●


光子様の祟り


これは私の友達の家の話です。

彼女の家は代々続く旧家の本家。
旧家ならば不思議な話が一つ二つあるのでは…?と思い、家にまつわる話を聞いてみることにした。

その中にひとつ、少し気味の悪い話があった。

それは、とある方から祟られている、という内容だった。
その、とある方、というのは、江戸時代に家に仕えていた女中だったそうで、彼女の一家は「とある方」のことを「光子様」と呼んでいる。
(実際には、その方の女中の時の呼び名に「子」を付け、様付けで呼んでいるらしい)

どうして祟られるようになったのかは、詳細を聞くことはできなかった。
彼女の怯えようが異常だったからだ。
聞けたことは、その家に祟りを残した光子様の供養と慰霊のため、先祖は光子様のために祠をつくり、祀る事にしたらしいということ。
ただし、本家の敷地の中には置いてはならないらしく、近くのお寺の一角に祠を建て、現在でもそこで祀っているらしいということ。

祟りだと言って、姿形が現れるわけでもなく、
話してくれた彼女の元気な姿を見ると本当にその祟りがあるのかも疑問な程である。

しかし、光子様の祟りは存在する、と彼女は断言する。

偶然の一致だと言われればそれまでだが、代々、本家直系の長女が家から出ても、すぐに戻ってきてしまうらしい。
この話を語ってくれた彼女も本家の長女に当たる。

祖父の妹にあたる大叔母は、昭和初期の当時には珍しく、二回も離婚し、三回目の結婚では夫をすぐに亡くしているらしい。
これを話してくれた彼女も高校を一人暮らしをしたが、二度失敗している。
どちらも酷く精神を病んだ状態で、実家である本家に強制的に帰らされたそうだ。
特に二度目は酷く、一日の大半を眠って過ごし、目が覚めている間も夢遊状態だったそうだ。
(『そうだ』というのは、彼女の中でもその頃の記憶が曖昧なので、人から聞いた話を元に思い出しているらしい)


日中はまだいいが、よく夜中に家中を徘徊していたらしいと言う。

中でも背筋が寒くなった逸話がある。
家族が朝、床に居ない彼女を探していると、その日は庭に向かう縁側で寝ているのを見つけた。
彼女が外で眠っている日は続き、その次の日は庭の飛び石の上、その次はもうひとつ先の飛び石の上、と。

写真

彼女が見つかる場所は、だんだん、光子様を祀ってある祠の方へと近くなっている。

そう気付いた時、流石に家族も背筋が冷たくなったらしく、その後暫く彼女は、家族と同じ部屋に寝かされるようになったらしい。

しかし、その事件から暫く経ち、彼女が本家に戻って時間が経つと、日常生活が普通に過ごせるまで回復した。
今でも、あの時の精神状態を含め、あれは何だったのかと彼女は語る。


そしてもうひとつ。
光子様は本来、女性に祟ると言われている。
そして、光子様の祠は、本家の直系女子が世話をしているのだ。
彼女の大叔母が本家を離れたのは、彼女が生まれてから後のことらしい。

もし、「自分が祟っていることを忘れさせないこと」がこの祟りだとしたら、
これからもずっと、この祟りは彼女の家からは消えてくれないのだろう。

人間の恨みというものはげに怖ろしきもの…………皆様もお気をつけを。



夜の羊


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