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男が貢ぐとき、男が恨むとき ―高田馬場・女性刺殺事件の根っこ―

動画配信中の佐藤愛里さん(22歳)が刺殺された事件は衝撃的でした。「男の貢ぎ方」と、見返りが得られなかったときの「恨み」の恐ろしさを思い知るという意味で。

佐藤さんは、ライブ配信アプリ「ふわっち」で活動し、2600人以上のフォロワーを抱えている人気ライバーでした。警視庁によると、高野健一容疑者(42歳)から200万円以上の金を借りており、返済をしなかったことに対する強い恨みを買っていたようです。

ふわっち公式ページより

 

ところで「頂き女子りりちゃん事件」を覚えていますか。少なくとも3人の男性に恋愛感情を抱かせて1億5,000万円の金をだまし取った詐欺事件。それに対し、今回の高田馬場刺殺事件は200万円の借金で恨みを買って殺されてしまった殺人事件です。金を騙し取られた男性からの恨みを買っているという点は共通しますが、高田馬場刺殺事件の方がより低い金額で強い恨みを買ってしまったと整理することができそうです。

200万円は確かに大きなお金ですが、殺人を犯してしまうほどの金額だったのか、それはなぜなのか、分析してみる価値はありそうです。

報道されているように、高野容疑者の経済的基盤は不安定で所得は低かった。 200万円は大金であったにも関わらず、それでも高野容疑者は佐藤さんの関心を引きたい、承認してほしい、という心理から用立てたのでしょう。しかし佐藤さんからは「見返り」どころか鬱陶しがられる始末で、挙げ句の果てに金は返済されなかった。「金を返さないのに配信をしていてやるせなくなった」というのが犯行動機のようです。

「応援したい」「特別な存在にしてあげたい」というファン心理は男女に関係なく特有のもの。しかし「頂き女子りりちゃん」のケースとは異なり「貢ぐ」行為があまりにも無理を重ねた結果であったため、裏切られたときの恨みもまた増大していってしまったのが今回のケースです。現代のようなSNS過熱期にはアイドルとファンとの距離も縮まりがちであり、それはデジタル市場経済に即した形式であるものの、殺したり殺されたり、といった生命に関わるリスクも自己責任でコントロールしていかざるを得ない。ファンになるのも自制心が必要な時代ですね。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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