政府がついに備蓄米の放出を決定しました。
しかし皆さんは「遅すぎる」と考えているはず。なぜなら米の価格は昨年よりも72%も上昇し、4000円台/5kgという高値が続いているからです。
まず農水省は「新米の流通とともに価格は下がる」と楽観視しすぎていました。そのため、これまでの農業政策路線を変えることなく補助金による転作奨励を続け、米の生産は抑制されました。さらに食糧需給の変化、流通の問題、気候変動などの深刻さが増し、米の価格は高騰しました。
政府の備蓄米/お米のソムリエ「豆知識」より
そこに加えて投機目的の業者による「買い占め」が事態を悪化させました。市場の需給バランスが大きく乱れてしまったのです。政府は消費者の負担軽減を第一に考えなければならなかったのに、農政改革をおろそかにし、需給の見通しを誤算し、投機筋の動きも見誤りました。
このような「見誤り」を引き起こした背景には、利益集団との密接な関係に起因する政治家と官僚の「癒着」があります。
歴史的にも、日本の農業政策は長年にわたり農協や特定の業界団体の影響を強く受けてきました。農政の中心にいる「族議員」はこうした団体の支持を受けることで政治基盤を固めており、その結果、既存の農業政策を抜本的に見直すことができません。だから転作奨励という、かつての「米余り時代」の発想を引きずった古めかしいものを相変わらず続けているのです。
さらに流通業界と政府の関係も大ありです。備蓄米の放出が遅れた背景には、価格高騰の恩恵を受ける流通業者の存在があり、政府の迅速な介入を妨げた可能性があります。加えて、投機筋の動きを適切に監視し、市場の安定を図るべき官僚機構も、過去の慣例に縛られ機動的に対応できませんでした。日本国政府は、国民のための農業政策を実行すべきです。
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女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。