「フェンタニル」は極めて強力な作用を及ぼす合成麻薬で、鎮静作用はモルヒネの50-100倍、「多幸感」はコカインの50倍以上だそうです。アメリカでは「フェンタニル」の蔓延が深刻で、「ゾンビ・タウン化」してしまった街も。フィラデルフィアの「ケンジントン通り」がその代表例で、状況が悪化の一途を辿っているため、トランプ米大統領は違法な「フェンタニル」の流入を防ぐため、主なルートと考えられている中国からの製品に一律10%の関税を課しました。
日本は、相変わらず大麻や覚醒剤が多く、アメリカやヨーロッパほどの蔓延には至っていません。とはいえ「フェンタニルは日本で慢延しないとは言い切れない」、と元厚生労働省麻薬取締部麻薬捜査官(通称、マトリ)は断言します。
ダークウェブや国際郵便を使った密輸が巧妙化しているし、また既に医療用「フェンタニル」は医療用鎮痛薬として合法的に使用されています。アメリカでも医療用「フェンタニル」が不法に市場に流出したことが慢延の契機となりました。
「フェンタニル」と「コカイン」の比較表
特徴 |
フェンタニル |
コカイン |
作用 |
鎮痛・多幸感 |
強い覚醒・高揚感 |
主な作用機序 |
痛みを抑える |
快感を増幅 |
強さ |
モルヒネの50-100倍 |
フェンタニルほどではない |
主なリスク |
極微量で致死的 |
心臓発作・脳卒中リスク |
依存性 |
非常に強い |
強い |
過剰摂取の危険性 |
極めて高い(少量で致死) |
高い |
出典:厚生労働省
以下に「ゾンビ麻薬」の恐ろしさをまとめておきます。「フェンタニル」を使用すると「多幸感」とは裏腹に、意識が朦朧として体がぐったりします。まるでゾンビのような立ち方・歩き方になるのは「多幸感」とは裏腹に、身体中の力が抜けてかろうじて足で体を支えている状態だから。非常に不安定な姿勢であるため頭を強く打って怪我をする人が多いのも特徴。
また血流が悪化し、使用者の皮膚が壊死したり潰瘍のような状態になることから、まるでゾンビのような見た目になります。少量を摂取するだけで致死量に至ってしまうし、死に至らなかったとしてもたびたび意識を失ってしまいます。「ゾンビ麻薬」恐ろしいですね。
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女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。