テレ朝のドラマ「プライベートバンカー」は、名門一族の巨額資産をめぐる泥沼を描いたドラマ。が、私は最近、生前からスタートしている相続争いの相談を、友人B子から受けています。かなり深刻です。
絹子(仮名、92歳)はB子の実母。ビル持ちで、亡き夫の巨額の遺産を相続しました。総額は土地だけで20億円超。B子一家の本拠地は福岡で、兄A夫婦が絹子の面倒を見ています。狡猾なAに対し東京にいるB子はマイペースでのんびり屋。ある日突然、B子のスマホに絹子が電話をかけてきて「Aが私の土地の名義を勝手に書き換えてしまった。私がAに贈与したことになっている」と泣きつかれ、さらに「登記済み権利書、銀行通帳とカード、実印、マイナンバーカードも全部Aに取られていて、私は小銭しか持っておらん」と訴えたというのです。
さらに詳しく事情を聞くと、絹子はどうやら日常的に「早く死んでくれ」「もう長生きせんでいい」などの言葉の暴力を振るわれていると。B子は、すぐさまAに抗議したのですが、AはB子に「母はボケとる。信じちゃダメだ」と相手にされなかった上に、その数日後には「余計なことをB子に言った」と絹子に激しく暴力を振るったのだそう。
さらにAは、絹子の委任状を偽造し絹子名義の銀行通帳から2千万円の預金を解約しようという暴挙に出て、これは流石に銀行から絹子のもとに電話がかかってきたことで絹子が阻止したのだそう。しかしまたしても絹子はAに激昂され暴力を振るわれたというのです。
B子は弁護士を通じて裁判を起こそうと試みたものの、Aは頑なに「贈与は母の意志だ。金が必要なのは母の治療費だ」と主張し、不正操作を正当化してしまう始末。B子は福岡から東京に絹子を連れてこようと試みましたが、絹子の保険証から何から何までがAに取り上げられている以上、持病のある絹子を診断書なしで移送することは難しく、絹子を東京に連れていくことさえできない状態なんだとか。解決の糸口はどこにあるのでしょう。やっぱり探偵の出番なのかも知れない。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。