「最初は、10万円くらいの軽い施術のつもりでした」

そう話すのは、都内在住の会社員・A子さん(28)です。SNS広告で見つけた美容クリニックに興味を持ち、カウンセリングを予約しました。広告には「手軽に受けられるプチ整形」「低価格」といった言葉が並んでいたといいます。
来院後、最初は簡単な問診と説明がありました。しかし、その後すぐに個室へ案内され、状況が変わります。
「カウンセラーの方と1対1で、かなり長い時間話しました。最初は希望していた施術の説明だったんですが、だんだん“もっとやったほうがいい”という流れになっていって…」
提示されたのは、当初の予定とはまったく違うプランでした。複数の施術を組み合わせた内容で、総額はおよそ80万円。
「このままだとバランスが悪い」「せっかくやるなら一緒にやったほうがいい」といった説明が続き、不安を煽られるような言い方もあったといいます。さらに、決断を急かす言葉が重なりました。
「今日契約すれば割引がつきます」
「今やらないと、また同じことで悩みますよ」
個室という空間もあり、その場の空気に飲まれてしまったとA子さんは振り返ります。
「正直、途中から断りづらくなっていました。ここまで説明を聞いて帰るのも申し訳ないというか…」
結果として、その場で契約。医療ローンを組み、当初の想定を大きく超える金額を支払うことになりました。しかし帰宅後、冷静になるにつれて違和感が強まります。
「本当に必要だったのか、全然わからなくなってきて。調べてみたら、似たような体験談がたくさん出てきました」
いわゆる“安い広告で来院させ、高額プランへ誘導する”手法です。美容医療の現場では、こうしたトラブルが少なくありません。
特に問題とされるのは、個室での長時間カウンセリングです。外部の目が届かず、心理的に断りづらい状況が作られやすい。そこに不安を煽る説明や「今決めないと損」という言葉が重なることで、冷静な判断が難しくなります。
「全部が悪いとは思いません。でも、あの空間はほぼ営業でした」
A子さんはそう振り返ります。
美容整形は本来、医療行為です。しかし現場では、“売る仕組み”が前面に出ているケースも少なくありません。「安い」という言葉につられて足を運んだ先で、まったく違う選択を迫られる。その構図に気づいたときには、すでに契約書にサインしている――。
そんなケースが、今も静かに増えています。

櫻麗
猫と紅茶があればご機嫌です
