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派閥解散は偽装サプライズでは?

 政治資金疑惑への対応で、派閥大好きな岸田総理が岸田派を解散するという行動に出ました。メディアの報道を見ると、“大英断”、“勝負に出た”と評価する論調が多いですが、これは間違っていると思います。

 そもそもおかしいのは、岸田総理は昨年12月に岸田派を離脱したはず。それなのに岸田派を解散させるというのは、派閥離脱が偽装だったことを意味します。偽装離脱する人間が派閥を解散と大見え切っても、それも偽装ではないかと勘繰らざるを得ません。実際、派閥を解散しても、ほとぼりが覚めた頃に政策集団と名前を変えて復活させるのは簡単です。それを政治資金規正法上の団体にするのは、ネット経由で総務省に届出をするだけで出来ます。

 かつ、岸田総理はぶら下がり会見で岸田派解散を表明した時、記者から「他の派閥はどうするのか?」と聞かれると、「他の派閥について言う立場にない」と答えました。あれ?岸田さんは自民党総裁、つまり自民党のトップなのですから、自派閥に限定せず、自民党の全ての派閥の解散を主導できるはずです。それにも拘らずこう発言するのですから、おそらく検察の手が及んでない麻生派と茂木派に配慮したのでしょう。

 そう考えると、岸田派の解散というのは、検察に立件されるのは安倍派だけと思っていて安倍派外しをしたら、自派閥の会計責任者も立件されることになったと分かり、慌ててそれへの対応で派閥の解散に出たとしか思えません。つまり、岸田政権の延命のために、サプライズを演出して取り敢えず岸田派を解散させたとしか思えません。

 かつ、問題なのは、このようにサプライズを演出すると、派閥の解散がさも凄いことのように捉えられ、それが政治資金疑惑への効果的な手段であるかのように世論に勘違いされてしまうことです。

 断言しますが、派閥の解散(しかも一部だけ)では政治資金問題は解決しません。パーティ券をめぐる規制も緩いし、政策活動費という使途の公開義務もなく領収書も不要なお金(自民党は昨年14億円)も見直さなければダメです。つまり、政治資金規正法を抜本的に改正して、政治資金に関する緩すぎる規制を強化することが不可欠なのです。

 なので、派閥解散ばかりが注目されてしまい、結果として本丸の政治資金改革が緩くなってしまわないか、非常に心配です。その観点からも、岸田総理の偽装サプライズを凄いと思ってはいけないのではないでしょうか。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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