情報提供・ご意見ご感想などはこちらまで! 記事のご感想は一通一通ありがたく読ませて頂いております。

政治資金疑惑について考える【後編】 ~岸博幸

岸田政権は今後どうなる?

 ちなみに、当たり前のことですが、今回の政治資金疑惑は岸田政権のみならず自民党にとっても大きな痛手であり、これから政権支持率も自民党支持率も大きく下落するでしょう。

 それでは、岸田政権は今後どうするのでしょうか。一部には内閣総辞職せざるを得ないのではという声もありますが、私は逆に、岸田総理は石にかじりついてでも絶対に辞めないだろうと思っています。

 その理由は、来春まで頑張れば、春闘で大幅賃上げが実現して所得税減税も実施されるので、景気が良くなって支持率も上がるのではと期待しているはずだからです。そもそも政治家は、今の情勢が悪いと、時間が経てば良くなると考える傾向がありますが、岸田総理にとっては来春が勝負のはずです。

 かつ、岸田総理は米国のバイデン大統領から来春に国賓として米国に招待され、米国議会での演説の機会も与えられるようです。岸田総理は絶対にこれを実現したいはずです。

 というのは、私は、岸田総理は何か実現したい政策があってそのために総理を目指したのではなく、やりたいことはないけど総理になりたかった人だと思っています。ある意味で、昭和の大企業のエリートサラリーマン(何か明確にやりたいことがある訳ではないけど社長になりたい)と同じです。

 こういうタイプの人は名誉が大好きです。大企業のエリートサラリーマンで社長になった人は大抵、会長になって経営の一線を退くと、政府の叙勲を欲しがり、経団連の幹部ポストに就きたがるのが典型です。

 つまり、岸田総理の場合でいえば、まず総理を長くやりたいというのは当然として、米国に国賓として招かれるというのはこの上ない栄誉に感じているはずですから、それが実現する来春までは絶対に総理を辞めないでしょう。

 更に言えば、岸田総理の視野は非常に狭くて世界や日本というよりも自民党の内部が中心のようですから(じゃなかったら、今回の政治資金疑惑への対応も派閥任せにせず、自民党のトップとして派閥に関係なく党全体の事実調査を命じているはず)、その狭い視野からは、今回の疑惑で安倍派が瓦解するのは小派閥を率いてきた自分にとっては逆にチャンスとも映っているはずです。

 そう考えると、岸田政権はもう既に政権末期の状態ですが、これが少なくとも来年の半ばくらいまでは続くのです。つまり、その間はまともな政策が講じられる可能性は皆無となります。

30年続いたデフレがようやく終わってインフレの時代に入るという時代の転換期にある日本にとっては、この大事なタイミングで政策が半年以上も止まることが実は最大のリスクとなるのではないかと個人的には懸念しています。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

タイトルとURLをコピーしました