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政治資金疑惑について考える【前編】 ~岸博幸

  皆様、大変ご無沙汰してます。長いこと記事をアップせず申し訳ありません。11月から多発性骨髄腫の新しい治療が始まったのですが、注射や薬が強いせいかずっと体調がイマイチな状態が続いていて、毎日の仕事の量を制限せざるを得ない状態なもんでして。。。

 

検察の戦略的なリーク

 その私にBOZZから“自民党の政治資金疑惑について書け!”とご下命がありました(笑)。私自身も、連日の報道を見ていてすごい怒りを感じているので、私が感じていることを率直に殴り書きで書いておきます。

まず、報道内容から明らかなのは、検察は自民党の5派閥の中でも安倍派、特に松野官房長官に完全にロックオンしているということです。

 検察は自分たちが勧善懲悪のヒーローとして世間から評価されたいと思っています。なので、これまでも大規模な事件の捜査の際は、敢えてマスメディアに情報をリークして捜査の進展状況を書かせ、世間の関心と怒りを盛り上げて相場観を作ることをやってきました。(その上で、民間の事件なら有名人や重要人物を、政治関連の事件ならできるだけ幹部クラスの国会議員を挙げたがる。)

 その観点から報道を見ると、1週間ほど前までは安倍派がターゲットという記事が多かったのが、この数日で松野官房長官を筆頭に安倍派幹部の個人名がどんどん報道されるようになったのは、まさに検察のいつものやり口です。

 ちなみに、臨時国会は12月13日(水)に閉会します。つまり、その翌日からは国会議員でも任意の事情聴取に呼び出すことなどが可能となります。そのタイミングまで一週間を切った時点で国会議員の個人名をマスメディアに出すというのは、検察が本件にいかに戦略的に取り組んでいるかを示しています。つまり、検察はかなりの量の証言や証拠を入手していて、少なくとも一部の議員については立件できる自信があるのでしょう。

 

重要なのは政治資金制度がまともに改正されるか

 ただ、どうしてもメディア的にはどの国会議員がやられるかばかりが注目されますが、もっとも大事なのは、今回の疑惑をきっかけに政治資金制度のまともな大改正が行われるかどうかです。

 派閥の政治資金パーティのパー券販売がノルマを超えた場合、超過分が国会議員にキックバックされ、かつそれが国会議員個人の政治資金団体の収支報告書に記載されずに裏金となったら、まず政治資金規正法違反であり、かつ脱税に該当するので、二重の罪になります。

  でも、今の制度のままでは、証拠が揃って悪質性が認められて検察が立件しない限り、キックバックを裏金にした国会議員は、まず政治資金収支報告書を訂正して、次に税金を支払って、あとはお詫びすればこと無しとなるでしょう。

 一方でこれが民間なら大変なことになります。そもそも企業や個人事業主は収入と支出を厳格に記載して適正な額の税金を支払わなくてはなりません。インボイス制度が始まって、経理にはより手間がかかるようになりました。そこで、もし芸能人や有名人が収入の一部を裏金にして隠して、それが発覚したら、即座に罪に問われ、芸能人ならテレビに出られなくなり収入が一気にゼロになります。

 この国会議員と民間での経理に関する厳しさの違いは酷すぎます。国会議員はそんなに特権階級の上級国民なのでしょうか。心底、ふざけるな、クソ食らえと言いたくなります。民間の経理に厳格さを求める以上は、政治資金の収支報告についてもそれと同様の厳格さを適用すべきです。

 今回の政治資金疑惑は、“令和のロッキード事件”となる位のインパクトを持つからこそ、自民党が政治資金制度について健全な自浄作用を発揮できるかこそがもっとも大事な論点なのです。

 それが出来なかったら、今度こそ自民党は国民の多くから見放されてしまうのではないでしょうか。(それでも野党が弱すぎるから政権から転落することはありませんが)

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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