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麻薬と貧困が渦巻く絶望の街「スキッドロウ in Los Angeles」

カリフォルニア州ロサンゼルスの中心部に位置するスキッドロウは1900年初頭は石油産業の繁栄が相まって活気あふれる繁華街でしたが、1970年代以降の急激なドーナツ化現象によって衰退し、現在はアメリカ国内で最も危険な場所の1つとなりました。

2023年の1月から3月までのたった3ヶ月間で、ホームレス男性が路上で刺殺された事件3件、女性が暴行され強盗された事件65件、麻薬密売人が銃撃戦で死亡した事件1件と、文字どおり麻薬と犯罪が渦巻くエリアです。

ホームレス、麻薬中毒者、犯罪者などがどこからともなく流れつき、薬物乱用や凶悪犯罪が深刻化するようになりました。テントや簡易シェルターが立ち並ぶ路地や、薬物を使用している人々など、貧困と麻薬問題の深刻さを目の当たりにする場所です。

またホームレスの人々は衛生状態が悪く、感染症や慢性疾患にかかりやすい状況にあります。交通事故や暴力の被害に遭うリスクも高く、観光客は滅多に訪れません。日常的に路上で死亡している人を見かけるのは、まさに地獄絵図です。

一方でこうした人々を救済するために税金を費やすかどうかという議論には、常に賛否両論がつきまといます。特にスキッドロウは極めて劣悪な環境であるため、ここを立て直すためには巨額の税金が必要です。犯罪を取り締まる警察官を増員する必要もあるでしょう。

さらに税金が必要となるのは、薬物中毒者の治療費や、ホームレスへの教育費、街を安全で衛生に保つための犯罪対策費、地域活性化にかかる費用などです。巨額の税金を負担する住民からすると、自己責任論、すなわち、犯罪も麻薬も、手を染めるのは自己責任の問題なのだから自分でナンとかすべし、という主張をする人も少なくありません。とはいえ、2023年の調査によるとスキッドロウには約4,400人のホームレスが住んでおり、そのうち約半数以上が薬物依存症を抱えていると推定されています。

こうしてスキッドロウは一般社会とは隔絶された「絶望の街」になっていきました。ここはアメリカ社会が抱える深刻な問題を象徴する場所ではありますが、ただし日本も他人事ではありません。特に昨今の歌舞伎町の治安悪化を見ていると、ことは深刻です。スキッドロウのように行き場のない人たちが居場所を求めて辿り着き、治安が乱れ、薬物が乱用され、凶悪犯罪が頻発するという悪循環に陥らなければと願うばかりです。

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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