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崖っぷちの自民党 -戦前からの裏金体制からの大連敗

自民党がボロボロだ。今年の4月以降、衆議院の補欠選挙が3選挙区で実施されたが全敗した*。地方はさらに深刻で、静岡県知事選、東京都目黒区、港区の区長選挙で3連敗した挙句、岸田自民党総裁の地元である広島県府中町長選で負け、茂木幹事長の地元である栃木県鹿沼市長選で負けた。つい先日は都議会議員補欠選挙(目黒区)でも負けた。もはや崖っぷちだ。

いうまでもなく収支報告書の不記載問題(いわゆるウラ金)が直接の原因だが、背後にある「政治とカネ」の問題は根深く、要するに特定の利益集団の利益だけを自民党が追求してきたことへのしっぺ返しだと考えて良い。政治資金を獲得するため、利益集団とズブズブの癒着関係を築き上げてきた自民党の旧態依然とした体制が収支報告書不記載問題を契機に地域に再認知され、いよいよ「自民党はダメだ」と愛想を尽かされたわけである。古くはロッキード事件(1976年)、リクルート事件(1989年)など、それ以降も幾度となく繰り返された利益誘導政治の末路である。

たしかに歴史的に見ても、自民党は農協・漁協、町内会、青年会議所、消防団、地元商店街、地場産業の商業組合など、地縁に根付く利益集団に利益を誘導する代わりに票やカネを獲得してきた。利益集団の頂点に自民党が乗っかり利益とカネを政治的に交換するという構造は、実は、自民党が立党するはるか以前の戦前からずっと、回路を変えながら残存してきた。要は「古い」体制なのである。

一般の地域住民からすると、利益集団の利益なんかより、生活に根ざした子育て、福祉、教育、コミュニティ、雇用などの方がはるかに重要なのであり、特定の利益集団の頂点たる自民党を支持したところで古臭い上にメリットがない。かといって、さしたる有力な野党も見当たらない。結果、政治への無関心が蔓延し、投票率が下落し、政治家と一般有権者との隔たりが深まる。選挙の持つ意味が低下し、まさしく「シニシズム」状態のまま(政治的諦念:「政治なんか無意味だ」という感覚)、ずるずると自民党政権が続く悪循環に陥っている。

最後に筆者の主張を述べてこの記事を閉じたい。私は、このあまりにも長く続いた自民党型利益誘導政治を終わらせたいと考えている。「投票率が上がらない」という民主主義国家としてあるまじき日本の姿を有権者側の責任にしないで欲しい。前例踏襲をやめ、年長者による権威主義的な影響力を退け、癒着や腐敗を改革し、変化を恐れずに組織や制度を刷新し、生まれ変わるのだ。有権者は変化を肌で感じるものだし、政治が変化の兆しを見せれば、一票を投じる際、一人でも多くの国民が将来への希望を見出し、政治に期待できるようになるだろう。少なくともそこまで持っていくのは内閣と責任与党の責任なのだ。

 

* 注)自民党公認の候補者を擁立せずに議席を失った「不戦敗」を含んでの3連敗。

堺 浄、趣味・木登り

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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