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自民党総裁選があまり盛り上がらない中、読者の方から質問をいただきました


今の騒乱を収めて、明るい未来に導かんとする方は自民党の総裁候補にいるのでしょうか。こういうご時世なので、騒乱志向の政治家が選挙で目立ってしまうのは仕方ないですが、政権を担う方にはそうあって欲しくありません。SNSもメディアも、騒乱を望む声、騒乱に乗じようとする野心に満ちていて辟易としております。

  ご指摘の通りです。今の日本の政治の問題は、夢を語って国民を説得するという、本当の意味での政治家が少なくなってしまったことではないかと思っています。

 米国で暗殺されたチャーリー・カーク氏は、MAGAの差別主義者のような印象が強いですが、実は私は高く評価しています。カーク氏は、全米の大学を回って、リベラル思想の大学生たちと徹底的に議論してトランプ支持に転換させたからです。
 それがトランプ再選の原動力となったことはどうでも良くて、大事なのは、カーク氏は民主主義の理想的な姿(自らの夢や理想を語り、議論して立場が違う相手を説得する)を実践したことです。ちなみに、LGBTの人と議論した際も、相手の立場や考えは否定せず、優しく別の考え方を示すことで説得しています。
 それと比べると、与党の政治家は国民の声を聞かず霞ヶ関の官僚に政策を任せっ放し、野党の政治家は国民の声は聞くけど、それを耳障りの良い主張に転化して人気を取るだけ、のように見受けられます。どちらにも、自らの夢を語る、議論して国民を説得する、という政治にとって大事なプロセスが欠如しているのです。

 こうした中で、自民党の総裁選が行われています。どの候補の公約からも日本の明るい未来は感じられませんが、これはしょうがないと思っています。
 今回の総裁選は、参院選での惨敗を踏まえて行われているし、野党やメディアの影響で国民の多くが近視眼的になる中では、政策の多くが惨敗の原因である物価高対策になってしまうのはやむを得ません。 
 ただ、個人的には、各候補が主張する政策ばかりに注目して、このような文句を言うのは意味がないと思っています。というのは、政権与党である自民党が国民から見放されてどん底まで落ちた現実を踏まえると、今は政策云々よりもまず自民党の立て直しが最優先だからです。どんな政策や外交をやるにしても、その母体がしっかりしていないと、いつまでもポピュリズムに振り回されることになります。
 ちなみに、自民党が参院選で惨敗した最大の原因は、党の組織とビジネスモデルが時代遅れになっているからです。自らの立候補の経験から間違いありません。なので、私は5人の候補の中で誰が正しい意味での“解党的出直し”に取り組みそうかに注目しています。
 この観点からは、私は小泉進次郎氏がベストだと思っています。公約の中で最初に党改革を掲げているのは小泉氏だけですし、企業再生の常で、本当に解党的な出直しをやる気なら世代交代は不可欠だからです。
 ちなみに、5人の候補の公約を採点すると、経済政策については高市氏、自民党の立て直しについては小泉氏が高く評価できると思います。

 ちなみに、小泉氏は経済政策については前回の総裁選と比べてだいぶ控えめになっていますが、本質的には改革志向なので、総理になったら最初は安全運転で、どこかで君子豹変して改革と夢を語ってくれるだろうと個人的には期待しています。
 今は小泉陣営の牧島氏のステマ要請で小泉氏への非難轟轟となっていますが、それでも総裁選では小泉氏が勝利するのではと個人的には予測しています。明治以来久々の40代の総理の誕生、まさに世代交代です。
 まあ、誰が総理になっても、なったらなったでメディアやネットは重箱の隅を突くように色々な批判を展開すると思いますが、大事なのは、次の総理がどん底の自民党を立て直して、野党に迎合せずにしっかりとした政策を主張できる気概とポテンシャルを持っているかです。私は今の自民党の為体に誰よりも危機感を持つ一人として、その点に注視していきたいと思っています。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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