●更新日 10/08●
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『佐世保事件にみる加害者家族』精神科医ヤブ





佐世保の女子高生殺害事件で、加害者の父親が自殺した。


被害者に遺族がいるように、加害者にも家族がいる。ネットが普及し、事件から数日で家族情報が全国に拡散されてしまう現代日本で、加害者家族が生き延びていくのは過酷である。たとえば秋葉原の無差別殺傷事件の後には、犯人の弟が事件後6年して、28歳で自ら命を絶っている。


佐世保の事件は未成年の犯罪であり、父親が親として責任を強く感じるのは当然である。しかし、社会的責任の取り方として、自殺は正しいことなのだろうか。死者に鞭打つことになって心苦しいが、むしろ彼のしたことは責任放棄である。犯人の少女はいずれ社会に戻ってくる。その時、彼女を身近で監視し続けることが、本当の意味での「親としての責任」であるはずだ。


加害者家族についてアメリカの場合を見てみると、たとえば銃乱射事件の後、加害者の家族の家に送られてくる手紙のほとんどが、

「いま、あの子(加害者)についていてあげられるのはあなたしかいないのだから、つらい時期だけれどもがんばりなさい。神の御加護がありますように」

といった感じの励ましだったらしい。


日本のように一族郎党追いつめて徹底的に社会から排除する、というのが決して悪いとは思わない。それは日本が長い歴史の中で社会秩序を保つために培ってきた文化である。だから日本とアメリカ、どちらが正しいということもない。あくまでも歴史、文化の違いである。


ところで、「世界は6次のへだたり」でできていることが多くの実験で証明されている。これは、どんな人でも自分の知り合いを6人たどれば、世界中の特定の誰かに辿りつけるというものだ。世界はこれほどに狭く、そして日本はさらに狭い。私の場合、以前にも書いたが、友人が佐世保に赴任しており、彼の子どもが加害者・被害者と同じ高校に通っていることもあって、加害者・被害者やその家族には2人か3人介せばたどりつく。


そんな狭い日本における私たちの生き方や文化が、改めて問われているように感じられる自殺の報せであった。



ヤブ ヤブ


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