午前6時。
まだネオンの光がかすかに残る歌舞伎町。通りは湿ったアスファルトの匂いと、遠くの排気ガスが混ざった都会の匂いに満ちています。街は静かに眠っているかと思いきや、足音や声、遠くで響く車のエンジン音が混じり合い、微かな熱気を帯びています。
ホテル街を歩く20代女性――一晩の秘密
午前7時半、ホテル街の裏通りを二人の女性が歩いています。
「ホテルで女の子同士で一晩中話してました。今その帰りです。」
肩を寄せ合いながら歩く二人。外はまだ涼しく、朝の湿った空気が頬を撫でます。笑い声の余韻と、昨夜の熱を帯びた部屋の香りが、まだ彼女たちを包んでいます。
話を聞くと、一人は同性の恋人と関係を持つレズビアンでした。夜通し語ったのは、ただの友情ではなく、誰にも言えない自分たちの気持ちのことです。街が眠りかける時間帯、二人だけの世界はまだ続いているようでした。
ホスト街で慌ただしく動く20代男性
午前8時10分、ホスト街を小走りで横切る男性がいます。
「ホストしているんですけど、店にスマホを忘れて取りに行くところです。昨日は飲み過ぎました。」
街灯の下、湿ったタイルに靴音が反射します。昨夜の喧騒を引きずったまま、彼は店へ戻ります。酒の匂いと缶コーヒーの甘い香りが混ざり合い、街に早朝の重みを与えています。
BARの客引きに励む30代男性
午前6時半、通りを練り歩く30代男性がいます。
「BARの客引きのために歩いてます。朝帰りする人を捕まえて、まだ飲もうって誘います。」
小雨が降り、アスファルトは湿り、足音が跳ね返ります。夜を惜しむ人々を探しながら、彼の目は街をスキャンします。空気にはタバコと缶コーヒー、湿ったアスファルトの匂いが混ざり、街全体が昼と夜の間に揺れています。
コンビニ前に立つ10代女性
午前6時、コンビニの前で立ち止まる少女がいます。
「先月北海道から家出して歌舞伎町にきました。トー横なら居場所があるかな、っておもって。私、皮膚が弱くて強い日光を浴びることができないんです。なので早朝か夜しか外に出られないんです。」
冷たい朝の風が彼女の頬を撫で、衣服の端を揺らします。人通りが少ないこの時間、街は安心できる空間になります。孤独と不安を抱えながらも、彼女はこの街の片隅で自分の居場所を探しています。
早朝の歌舞伎町――ネオンが消えた街は、湿ったアスファルトの匂い、遠くで響く車の音、微かな熱気に満ちています。夜を惜しむ人々、秘密を抱えて歩く人々、居場所を求める人々――それぞれの人生の断片が交錯し、街は眠らずに息づいています。

櫻麗
猫と紅茶があればご機嫌です