、、、と質問されることが結構あるんですが、私はおそらくその通りなのだろうと思っています。岸田首相は外務大臣の経験が非常に長いのに対し、経済閣僚の経験がないからやむを得ない面もありますが、官邸主導で経済政策が動くというのがほぼないからです。
ちなみに、“官邸主導”には二種類あります。一つは首相本人や官邸のスタッフが自ら政策を主導する場合、もう一つは霞ヶ関の省庁のお膳立てで首相が主導する体裁を演出する場合です。
最近の事例でいえば、前者の典型例は少子化対策ですが、方向性だけ主導して中身は完全に霞ヶ関の官僚任せだったので、かなりイマイチな結果になりましたよね。そして、後者の典型例はマイナンバーの総点検や福島原発処理水の海洋放出です。 どちらの官邸主導でも良いのですが、経済政策での官邸主導をもうちょっとうまくやって欲しいなあといつも感じてしまいます。
例えば、8/15に4〜6月のGDP成長率が発表されました。年率6%成長と数字は良いのですが、中身を見ると、外需が大幅プラスだっただけで、国内の消費や投資はマイナスでした。モノとサービスの双方での相次ぐ大幅値上げにより景気は決して良くないと言わざるを得ません。
この現実を踏まえると、9月末で終了するガソリン代への補助(1リットル当たり7円程度)と電気・ガス料金への補助(電気料金で世帯当たり数千円)を10月以降も延長することは不可欠なのは、火を見るより明らかでした。
それにも拘らず、岸田首相がその延長に向けた検討を自民党に指示したのは、GDP成長率の発表から1週間後の8/22で、メディアでガソリン代高騰に向けた批判が噴出し始めてからです。
なぜ官邸主導の動きがここまで遅かったのか。まず、省庁のお膳立てによる官邸主導は無理だったという現実があります。これらの補助金を所管する経産省が早く動けば良かったのですが、数兆円の財政負担が必要となるので、事務レベルの調整で財務省が了解するはずないからです。
となると、首相本人か官邸のスタッフが危機感を持って早く動くべきだったのですが、8/18に日米韓首脳会合があったのでちょっと遅れるのはやむを得ないにしても、やはり遅過ぎますし、何よりも言わされ感たっぷりの岸田首相の言い振りを見ると、批判が高まっていることに危機感を感じた自民党や霞ヶ関の進言でようやく岸田首相が動いたのではないかと思います。
こうした現実を踏まえると、やはり岸田首相は経済政策についてはあまり関心ないのだろうなあと改めて思ってしまいます。
ただ、じゃあ岸田政権での経済政策はダメだと諦める必要はありません。今回の補助金の延長を巡る動きから分かるように、批判が高まりさえすれば遅ればせながらも動いてくれますから、官邸主導が遅いなら自民党の政治家に危機意識を持たせれば良いのです。
なので、もっとみんなで怒って騒ぎましょう。今のままでは物価上昇が続いて生活はもっと苦しくなります。もう株価もそう上がりません。ガソリン代や電気代・ガス代への補助以外にも、政府与党にやらせるべき経済政策はたくさんあります。諦めず、みんなで怒りをぶつけて行きましょう。
岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。