依頼者は、北陸出身で工業系大学を卒業をした２４歳の大人しい感じの会社員だった。
彼は、恋人紹介所から送られてきた２枚のスマホ画像を私に見せた。
どう見てもプロのモデルとしか思えないほどの美人だった。
すぐに変だと気付いた。明らかにスタジオで撮られたものだ。
「最初に、その画像が送られてきたんです」
入会する時、どういう女性が好きなのかアンケートを記入すると、例の写真と彼女のプロフィールが送られてきた。
入会金が１０万円で月会費が２万数千円かかったが、その２１歳のＯＬが気に入ったので、すぐに入会の手続きを取ったらしい。
しかしその後、彼女とデートする機会は一向に訪れない。その後何人かのリストが来たが、数ランク見劣りする女性ばかりだった。
依頼者は紹介所に料金の返却を求めたが、契約上それはできないと拒否された。
「詐欺で訴えたいんです。調査料を払っても！」
依頼者は興奮した口調でそう訴えた。
先ず画像の女性が誰なのかを探す必要がある。
私の知り合いに芸能プロダクション社長の友人がいるので、その会社の名刺を借りて調査活動を始めることにした。芸能関係者を装うのだ。
ターゲットはＳＮＳなどでヒットしなかった。テレビタレントや女優の卵、歌手、モデルに憧れて何処かのプロダクションに所属するようになった女の子に違いない。
芸能界を夢みて、登録料やレッスン料を取られるばかりで一向に仕事が来ない。彼女もそんなプロダクションの毒牙にかかってしまった一人なのだと推測する。
そういう会社は限定されてくるので、調査対象を十数社に絞った。
私は画像のカラーコピーを持って
「お宅にこの子が所属していませんか、映画の端役で使いたいんですが」
と聞いて回った。
１０日後、ついに画像の女性が所属する事務所を突き止めた。
渋谷で女の子をスカウトしている会社だった。
美人度を１００点満点で計るとすれば、６０～７０点くらいの女の子を中心に集めて、登録料やレッスン料をむしり取っている。
私はオーデションの名目で例の女性と面談することにした。
依頼者から預かった画像と同一人物だった。身長１６６センチ。ロングヘヤに、オレンジのヘヤバンドをしていた。すらりと伸びた脚がいやでも眼についてしまう。ミニスカートからオレンジ色のパンストを覗かせているのだ。
私が仕事のことを訊ねると
「ほとんど仕事をしてないんです。」
と、彼女は正直に答えた。
私は、依頼者から渡された資料の内容を確かめてみた。
「出身はどちらですか？」
「高崎（群馬県）です」
彼女がそういった時、私は恋人紹介所がプロフィールを捏造していたことを確信した。
プロフィールには横浜出身のＯＬと書かれてあった。
私は、例の画像を見せた。
「この写真に見覚えはありますか？実は、これを見て気に入ったので、あなたの事務所に連絡したわけです。」
ーつづくー
ＢＯＺＺ