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ケツを掘られた夜の痛みは

マスターは、私にうっとりした視線を送っている。私は、ようやく調査活動に入れると思った。私は、腕枕をしながらマスターに探りを入れていった。
「マスターは、誰とでもこんなことをする?」
 私は、女が嫉妬しているような口調で訊ねた。
「実技試験だけよ。」
「特別な彼はいない?」
「いないわよ。それより、今晩からじゃんじゃん稼いでね。」
 
私は、その夜から店に出ることになった。ホストたちはカウンターの中に入って、客の指名を待っていた。誰もひと言も喋らず、異様な雰囲気だった。私は、指名がつかないように客と視線が合わないようにして店内をうかがった。マスターの男関係を知るためには、ベテランホストから聞き出すのが最も簡単な方法である。私は、閉店時を見計らってホストのひとりに声をかけた。しかし、彼はまだ3日目でマスターのことは何も知らなかった。

翌日、私は経験が豊富そうなホストを眼で追っていると、なぜか客から指名されてしまった。相手は薄汚い中年(当時私は27歳)で、ホモ専門のホテルに連れて行かれた。私は開き直るようにしてベッドの上に横になった。私の尻にローションを塗り、差し込もうとしているのだ。次の瞬間、臀部だけではなく、全身に激痛が走った。私は、わずか2万円で処女を失ってしまったのである。
 その日も店が閉まると、ホストを誘い出してマスターのことを聞き出してみた。そのホストも経験が浅く、マスターの男関係のことは何も知らなかった。
3日目、不覚にもまた指名がついた。あいにく依頼者が店に顔を出していたので、真面目な働きぶりを見せなければならない。仕方なく中年サラリーマンのあとをついていった。今度は、すぐに口に含み早く出させるようにした。もちろん、飲み込まずに吐き出した。店に戻ると、マスターが笑顔で近づいてきた。

「あんた、なかなかやるわね。」

仕事のためとはいえ、自分が情けなくなったが、しかしその日は大きな収穫があった。経験半年のホストからマスターの彼氏を割り出したのである。
私は早速、依頼者に報告するために、彼の経営する居酒屋を訪れた。あるホストと深い関係にあると伝えると、依頼者は激怒してマスターに電話をかけた。
「お前、松本と付き合っているだろ!店を潰すぞ、この野郎!!」
普段のオネエ言葉から一転して、ヤクザのような凄まじい迫力だった。夫が不倫の妻を詰る口調よりも凄味があった。
私は、その光景を尻の痛みも忘れ、ただ茫然と眺めていた。

 

BOZZ

 

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