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改めて自民党と統一教会の関係を考える

 9月に朝日新聞が、2013年の参院選時に安倍首相(当時)と統一教会幹部が自民党本部の総裁室で会っていた写真を報じ、自民党の統一教会への組織的関与が疑われると主張しました。これをきっかけに統一教会問題が再燃した感がありますが、この写真だけで組織的関与と言えるのでしょうか。ちょうど衆院選のタイミングなので、改めて考えてみましょう。

 

自民党総裁室で会っただけで組織的関与???

 そもそも、自民党本部で会ったから自民党の組織的関与が疑われるというロジックに無理があります。例えば、霞ヶ関のどの役所の大臣も、大臣室を使って役所と関係ないプライベートな面会をしていますが、当たり前の話、その面会相手に役所は組織的に関与などしていません。

 かつ、私自身の経験からも組織的関与ではないと思います。安倍政権の時、私は選挙の度に安倍さんからたくさんの候補の応援演説を頼まれましたが、それらは全て安倍さんが直接電話で依頼してきて、かつ、頼まれるのは安倍派の候補ばかりでした。

自民党総裁として組織の判断で党の候補の応援をというより、安倍派のトップとして自派閥の候補の応援を依頼してきたのです。だからこそ、他派閥の候補の応援ならその派閥の幹部から頼まれるのが常でした。こうしたやり方は、安倍さん以外が首相の時も同じです。

かつ、これまで見聞きした経験から、選挙が弱い候補者に団体などを応援につける場合も、派閥の幹部が個人的に行う(自分が懇意にしている団体を、自分が目をかけている派閥の若手に紹介する)のが通常です。

 つまり、現実の自民党は、選挙に党を挙げて組織的に取り組めるようなしっかりした組織ではないのです。だからこそ、裏金問題も党より派閥で起きたのです。

以上から私は、統一教会との関係も自民党の組織的関与ではなく、安倍さんなど個人レベルでの繋がりだったのだろうと考えています。

 

萩生田氏は統一教会と深い関係???

 となると、統一教会の問題に関する自民党の側の責任の果たし方も、裏金問題と同じになるはずです。

組織としての調査などには限界があるので、それよりも、統一教会との関わりがあった政治家個人が、その関わりについて説明責任を果たすとともに、関係を明確に断つことが必要です。逆に言えば、それを超えて組織的関与を疑い続けるのは、答えがない問題を解けと言っているに等しい気もします。

 ちなみに、朝日が報道した写真に自民党の萩生田光一議員も映っていたことで、萩生田氏は統一教会とズブズブだ、萩生田氏が安倍さんに統一教会を紹介したのでは、などと推測する人も多くいますが、これも違うと思います。

 私が萩生田事務所に確認したところ、当時の日程表にこの面会が記載されていないので、萩生田氏は当日急に呼び出されたと考えられるとのことでした。となると、私が選挙応援を頼まれた時と同じパターンで、安倍さんから急に直電で、統一教会との会合に呼び出された可能性が高いように思えます。陰謀論も程々にすべきではないでしょうか。

 

朝日新聞は自己反省も必要ではないか?

 ところで、この朝日新聞の記事から改めて考えさせられるのは、統一教会問題で非難されるべきは自民党だけなのかという根本的な問いです。

 もちろん、銃撃事件をきっかけに明らかになった宗教2世の皆さんのご苦労や霊感商法の実態を知ると、統一教会と関わりのあった自民党の議員が最も非難されるべきなのは当然です。

 ただ、逆に言えば、最近になって分かった事実から11年前の安倍さんと統一教会のつながりを非難するだけというのもおかしい気がします。

 というのは、11年前に安倍さんが統一教会の幹部と自民党本部の総裁室で会ったということは、その面会の事実がメディアに知られて世に報じられることを安倍さんは気にしていなかったとも考えられるからです。

総裁室がある自民党本部4階には政治部記者が常駐する部屋(平河町クラブ)もあり、記者が総裁室などへの人の出入りを常時見張っています(記者に見られないように入れる裏導線もありますが)。党本部の総裁室で会ったら、記者にバレるリスクが大きいのです。もし安倍さんが、統一教会はヤバい組織なので記者にバレずに会いたいと思ったら、自民党本部ではなくホテルの会議室などを使ったはずです。

 つまり、党本部の総裁室で会ったということは、安倍さんは11年前の当時は統一教会について、現在のように解散命令請求が必要な位に問題が多いと認識できていなかった可能性があるように思えます。

 そして、同じことは安倍さん以外の者、特に朝日新聞にも当てはまるのではないでしょうか。朝日新聞は2013年の参院選後の8月16日に図のような報道をしています。11年前の時点で、安倍さんが自民党総裁室で支援を依頼した北村議員と統一教会(世界平和連合)のつながりを把握していたのです。

 

 

 それにも拘らず、当時は朝日新聞も他メディアも、統一教会と自民党の議員のつながりについて現在のような厳しい追及をしていません。メディアも安倍さんと同様に、当時は統一教会の本当に深刻な問題には気がついていなかったとも考えられます。

 もしこの推測が正しいとしたら、朝日新聞は11年前の安倍さんの統一教会とのつながりを非難するだけに終わらず、その当時に統一教会と自民党議員のつながりについて徹底的な追及をしなかった自らに対する自己反省も必要ではないかと思います。同じことは朝日新聞以外のメディアや評論家の方々にも該当します。

統一教会の問題は深刻であるからこそ、自民党や安倍さんを非難するだけで終わらせず、メディアや関係者が自己反省も含めてこの11年間を正しく総括してこそ、同種の問題の再発をどう防げるのかという建設的な議論につながるのではないでしょうか。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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