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高市早苗の野望 -「揺るぎない自衛隊」を渇望するマッチョウーマン

高市早苗は「タカ派」としての立場を強く打ち出す政治家です。とりわけ自衛隊に揺るぎない地位を授けるための憲法改正・非核三原則の見直し・靖国神社参拝は、いずれも強硬な国家主権と防衛力強化策です。高市が、国益のために妥協を許さない「鉄の女」と言われた英国の元首相・マーガレット・サッチャーを敬愛するのは、己の姿を「鉄の女」と重ね合わせているからでしょう。


自民党公式HPより

 

しかし日米同盟に強く依存している日本の立場を勘案すると、高市の政治姿勢はインパクトとは裏腹に日米同盟に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

防衛費の増額は短期的な安全保障強化策として概ね評価されていますが、高市の主張どおり「今後も防衛費を大幅に増強する」となると別の問題が浮上します。というのも日米同盟は、「経済的支援と基地提供は日本、主導権は米国」という棲み分けで成り立っています。高市がいう「自衛隊の揺るぎない地位」というのは、つまり、米国に主導力の低下を認識させることであり、必然的に、日本側に大きな負担が求められる形で関係再構築が模索されることになります。

憲法第9条の改正論も日米同盟に負の影響を与える要因となります。高市は、憲法9条を改正し自衛隊の立場を明確したいと考えているようですが、日本が軍事的行動の拡大を企図すればそれは米国の日本に対する主導権低下を意味する。これまでもアジア太平洋地域における日本の国益は必ずしも米軍の存在意義と噛み合わないこともありましたが、これまでと異なり日本が独自の軍事行動をとるようになれば日米の防衛協力関係は瓦解するでしょう。

では、中国との関係はどうでしょう。

米国の主導権が低下すれば、それこそが中国が日本に立ち入る隙になります。加えて、靖国神社参拝は、中国や韓国との関係悪化を引き起こすと考えられており、高市の公式参拝によりアジア近隣諸国との緊張が高まるリスクがあります。この点、実は現在も米国は懸念を表明しています。中国との競争関係が激化する中で、同盟国である日本には東アジア地域の安定に向けたバランサーとしての役割を期待しているため、日本の行動で米中対立が刺激されることを嫌います。

他方、高市が師とあおぐ安倍元首相は、極めて好戦的でやりづらいトランプ元大統領とも「ゴルフ外交」と揶揄されながらうまく付き合い、インド太平洋(QUAD )という創造的な枠組み作りを主導しました。総理大臣就任以降、あれほどまでに反日デモをやられ嫌がらせを受けてきた中国・韓国にも極めて丁重に「対話の窓」をオープンにしてきた政治的態度は立派でした。

翻って、大仕事を成し遂げた安倍のように高市がなれるかと問われるならば、7-3の割合で「不可能」と判断せざるを得ません。自民党総裁選挙で「高市早苗総裁」の誕生を自民党員が退けたのは懸命な判断だった。やはりリスクが高すぎるのです。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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