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自民党総裁・石破茂という「反主流派の異端児」

石破茂自民党総裁が誕生しました。


自由民主党公式HPより

 

石破は自民党の国会議員として過ごした40年間もの間で、実は主流派であったのはごく短期間で政治家人生のほとんどを「反主流派」として過ごしている異端児です。

石破の経歴を簡単に振り返ると、

 

初当選後(1986年)、中曽根康弘率いる「清和会」(のちの安倍派=清和政策研究会)に入会

故小渕恵三元首相の「平成研究会」に移籍

1999年「加藤の乱」で自民党を追われた加藤紘一を支持

以後、紆余曲折があり石破を派閥の領袖とした「水月会」を設立

総裁選で安倍晋三に敗北し再び紆余曲折の後、「水月会」会長を辞任、派閥解散

 

と、1999年以降は、常に反主流派を貫いています。

反主流派というのは、いわば組織の少数派です。それゆえ、石破が存在意義を発揮するためには、安倍総裁以降(2012年)の政権に対する「批判的な立場」を取り続ける必要がありました。ですから主流派からはますます退けられ孤立しているふうに見える。必然的に石破の活路は、そうした中央組織での事情に疎い「地方」でみいだされることになる。だから彼はひたすらに地方を行脚し「地方創生」を叫び続けてきました。

「地方創生」を重視した最も有名な過去の自民党総裁は田中角栄です。角栄は、1972年に発表した「日本列島改造論」を通じて都市と地方の格差を解消し、全国的なインフラ整備を推進し爆発的な人気を獲得しました。石破が最も尊敬する政治家として「田中角栄」を挙げるのは、地方重視を政策的にも理念的にも貫いた角栄に対する憧れとシンパシーからくるものでしょう。

では、石破に角栄ほどのカリスマ性があるのでしょうか?

石破はたしかに地方創生など、反主流派的な政策や理念を訴えてきましたが、例えば「道州制」を導入したいと考える国民がどれほどいるのでしょうか。道州制を導入することによって現在の権力機構に揺らぎが生じる官僚たちは、それを支持するでしょうか。

もちろん「地域に根ざした経済発展」は重要課題ですし地元の中小企業をつぶさないことは短期的な地域の発展に必要不可欠ですが、今の日本に求められているのは企業の国際競争力を強化することではないでしょうか?

つまり、反主流派として構想した政策や理念はあくまでも反主流派時代に構想したものに過ぎず、石破が総裁という立場につくや否やそれらは政治体制を維持するための様々な「既定路線」に優先順位を奪われることになるのです。となると、反主流派として培われた石破のアイデンティティは揺さぶられることになる。

もちろん、石破茂が構想してきた反主流派としての政策や理念には「多様性を促す」という肯定的な側面が期待できます。しかし石破には角栄ほどのカリスマ性がありませんし、常日頃から主張のわりには実効性の乏しさも指摘されるところです。

私は、石破の反主流派としての政治姿勢は必ずしも政策の質の向上に寄与するとは思いません(その理由は前述のカリスマ性と実効性の欠如)が、石破に、自民党内の政策議論をより多様化してほしいと思っています。せっかくなのだから、既定路線とは別の、異端児さを貫いて欲しいと思っています。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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