ニッポンのルッキズム(外見至上主義)がとどまるところを知らないぞ、と感じます。特にSNS。
「インスタグラム」「X」「YouTube」などが美しい男女で溢れているのは、それだけ外見に対する評価が以前にも増して重視されるようになってきたため。テレビや雑誌にしても、この10年で美容整形の広告が20%も増えたそうですし、いわゆる「マッチョ」を目指してトレーニングする男性もそのくらい激増しているようです。現代は、男女に関係なく誰もが外見に関するプレッシャーを抱えて生きる時代、ともいえましょうか。
私たちの成長の過程でも外見プレッシャーは結構あるわけで、例えば、依然として「見た目」を理由にした「いじめ」は減りません。小中高校生の育ちざかりの期間はとりわけ外見に関する評価が厳しくなる傾向があり美容整形やダイエットが一般に行われています。また就職活動では外見が選考に影響を与えるのではないか? と考えがちではありませんか? 就活の前に美容に力を入れたり、ダイエットしたり、筋トレをしたりする学生も増えているようです。
とはいえ、社会人になれば外見なんかよりも「実力」がものを言う世界なのだ、と私も思っています。「男は度胸、女は愛嬌」って昔からいうとおり探偵には少なからず度胸も愛嬌も必要だと思うし。現に、夫と結婚しようと決めたときも外見はあまり重要ではなかったです。
ところがやっぱり美女・イケメンであるだけで生涯でものすごいトクをしているというデータがテキサス大学で労働経済学を専門とするダニエル・ハメルメッシュ教授の研究で明らかにされました。教授の研究を少しだけ要約してみます。詳しい内容が知りたい方は文末の「出典」を参照してみてくださいね*。
まず第一に、美しい外見でトクするのは、なんといっても収入の多さだそうです。美しい外見の労働者は、ほかの労働者よりも高い賃金を得る一方で、外見が美しくない労働者が受け取る賃金は平均よりも低いのだそうです。つまり美しい外見は企業の利益や売上を増やすことができるのだと、雇い主が認識しているということです。
そして第二に、美しい外見を持っていることによる利益はむしろ男性にもたらされるのだそうです。美しい外見を持っていない男性は美しい外見の男性より17%少ない収入を得ているということが明らかにされているようです(美しい外見を持っていない女性は美しい外見の女性より12%少ない)。こうしてみると、美しい外見であることでトクをしているのはむしろ男性の方だということがわかります。
研究結果を聞いた夫は、シワ取りにでも行こうかな、と申しております。だけどルッキズム社会ってどうなんでしょうね。外見の美しさを追い求め続ける人生ってかなりの重圧だろうし、老いや衰えとどのように折り合いをつけていくのかも気になります。
*出典
Hamermesh, Daniel S. (2011). Beauty pays: Why attractive people are more successful. Princeton University Press.
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。