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自民党総裁選 -次は小泉進次郎!?­

岸田首相がついに自民党総裁選への不出馬を表明しました。「次は総裁になりませんよ」という意思表示ですから事実上の退陣表明です。今日は、もし次の自民党総裁に小泉進次郎が選ばれたらどうなるかを、私なりに大胆予測していきます(独断と偏見をご容赦ください)。


撮影:井津川倫子,2019年.

 

小泉進次郎といえば「進次郎構文」。例えば「気候変動に取り組むことはセクシーでしょう」「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っている」(ともに2019年国連気候行動サミット)など。

散見されるのはいわゆる「トートロジー」といって、要するに「バナナは黄色いからバナナだ」「ニンゲンとは、まさにニンゲンであるがゆえにニンゲンなのだ」のように主語と述語がほぼ同義語で構成される文章です。論理性には乏しいですが、相手に自分の主張を訴える、という観点でいうと伝わりやすく、なによりもエンタメですよね。外交でもユーモア溢れるお人柄はきっとインパクトを生み出すに違いありません。

選挙のためにも小泉進次郎のような人材は最高です。いうまでもなく秋以降に実施される衆議院議員選挙では「政治とカネ」がひとつの争点になります。政務活動費をめぐる「裏カネ」問題のインパクトはそれなりに続いていますから、国民の自民党に対する政治的不信を払拭するほどのインパクトを持つクリーンかつ改革的で、国民からの人気がある新総裁が「選挙の顔」となってイメージを刷新しなければ自民党は小選挙区の議席を失うことになるでしょう。きたる衆院選でも人を笑わせ、そして和ませる「進次郎構文」を存分に活用してほしいです。あれを聞いて不幸になるヒトはいない笑。

ただし、「進次郎構文」で抜群の人気を博したからといって内閣総理大臣ともなれば政権運営上の懸念がないわけではありません。最大の懸念は、父君の小泉純一郎氏にも当てはまりますが、爆発的な国民人気と裏腹に党内での政治基盤が脆弱なことです。その点、小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」と訴えて郵政民営化に反対する議員を「造反議員」と称し彼らの小選挙区に刺客まで送り込み国民の人気を博しました。利益誘導政治にがんじがらめになった派閥の領袖を善と悪の「二元論」における悪に仕立て上げ、敵を明確に想定する手法を小泉純一郎氏がとったのは、国民からの人気と支持率の高さを維持するために「いかに単純でわかりやすいか」という価値基準を満たす必要があったからです。要は、政権を、党内の政治基盤で安定的に運営するのではなく国民からの人気によって運営するため、ときに過激に、メディア戦略的に、ならざるを得ないというのが実情です。

専門用語ではこのような劇場型の政治手法を「ポピュリズム」といいます。小泉純一郎氏に見られたような利益誘導政治との戦いを、特に「改革型ポピュリズム」と呼びます*。小泉進次郎も父君の政治手法である「改革型ポピュリズム」を受け継ぐのだとしたら、敵は誰かな。ともあれ、自民党新総裁は来月に誕生します。

*大嶽秀夫.2006.『小泉純一郎 ポピュリズムの研究:その戦略と手法』東洋経済新報社.

最近は観葉植物にものすごーくハマっています。これは相棒の「ホンコンカポック」。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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