石破首相がようやく辞任を表明しましたが、ちょうど読者の佐野さんからすごく大事なご意見をいただきましたので、石破首相の何がダメだったのかを考えてみたいと思います。
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劉邦は行儀が悪く、見た目も悪く、色々とだらしなく、若くて勇ましい項羽に負け続けて、みっともなく逃げ続けた漢の創始者ですよね。
頼れる側近が増えればと思い、岸さんを応援していたのですが落選されてしまって残念です。どうしたら石破さんは大業を成せるのでしょう。
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そうなんです。優秀な側近がいないことが石破首相の一番の問題でした。それが影響して、首相になって1年近く経つのに政策の実績はゼロ。
それどころか、アドバイスする人がいないせいか、両院議員総会での中途半端な居座り発言と「総裁選になる位なら解散する」という恫喝が党内の怒りに火をつけてしまい、結果的に辞任に追い込まれました。
なぜ頼れる側近がいないか。リーダーに必要な資質や魅力に欠けているからではないかと思います。
菅首相や岸田首相は、政権の支持率が低迷して今のままでは選挙に勝てないという党内の声を受け、選挙に負けてもいないのに総裁選に出馬せず自ら首相の職を辞しました。今の石破首相と正反対の潔さです。加えて、両氏とも目下の議員などへの思いやりもあるので、今も多くの人から慕われています。
そう考えると、石破首相は長い国会議員生活の中でトップに立つ資質を身につけられなかったのが、最大の残念な点かもしれません。
ちなみに、佐野さんからは以下の意見もいただきました。
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過激なポピュリズム政党が躍進するよりも、自民党がシン自民党に生まれ変わってくれる方が、私たち国民にとっては一番痛みが少ないですから、期待したいところですが…
国民の期待は「日々を懸命に生きる庶民にまで届く経済政策」です。経済が良くなっても私達の暮らしは良くならないだろう、という長年の不信がますますポピュリズムに走らせます。改革のスローガンを早く発信して欲しいです。
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これも凄く大事な点で、自民党が参院選で惨敗したのは自民党自体に問題が多かったのも事実ですが、それと同時に、石破政権の官邸の体制がダメで、経済政策を霞が関の官僚に任せ放しにしたことだと思っています。
与党にとって選挙は、日々の経済政策の評価に他なりません。一方、官僚は自分たちのペースで政策を立案・実施するので、それに任せていては国民が求める政策が実現できるはずありません。実際、石破政権の約1年の間、実効性ある物価高対策は講じられませんでしたし、外国人対策もほぼ皆無でした。これでは選挙に負けるに決まっています。
逆に言えば、小泉政権や安倍政権は、官邸が世論や官僚をしっかり監視し、必要に応じて政策を修正させてきたからこそ、長期政権になったと言えます。
そう考えると、次の首相が誰になるかはともかく、これらの点での石破政権の失敗を繰り返さないことが大事になるのではないかと思います。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。