高市首相が衆院解散・総選挙に打って出る意向を固めました。
メディアやネット上の反応は、政策最優先と言っていたのにと批判の声が多いように見受けられますが、そのように批判されるリスクを取ってまでなぜ早期の解散・総選挙を決心したのでしょうか。
よく言われるのは、経済政策のコアである“責任ある積極財政”への国民の信認を得るためと言われています。確かにその面はあるでしょう。
実は今の予算は積極財政ではありません。一般会計の当初予算額を見ると、来年度(122兆円)は今年度(115兆円)より7兆円増えているので、積極財政と見えるかもしれませんが、社会保障費・国債費・地方交付税という毎年必ず増える3項目だけで5兆円程度増やさざるを得ません。また、今の物価上昇率が3%くらいであることを考えると、予算全体も自然体だと3%増になって然るべきです。
かつ、当初予算の名目GDP比が前年とほとんど変わっておらず、かつ過去30年の中で12番目に低い水準であることを考えると、来年度予算はむしろまだ緊縮財政と言っても過言ではないのです。
それにも拘らず、一部野党、そしてそれ以上にメディアや評論家に“積極財政をやるから金利上昇、円安が進んだ”などと批判され続けると、高市首相も“ならば積極財政への国民の信を問おう”と思って当然です。
ただ、個人的には、高市首相は積極財政に限らず、やりたい政策を実現するためにこそ批判を覚悟で解散・総選挙を決心したのではないかと思っています。
自民党は参議院で過半数を持たないので、国会で予算を成立させるには衆議院の過半数の賛成が、賛否が拮抗する法律を成立させるには衆議院の2/3の賛成が必要となります。
政策の実現には予算と法律の双方が必要なので、維新との連立で過半数は確保したものの、国民民主党を連立に引っ張り込んでも2/3に遥か及ばないことを考えると、早く選挙をして自民党の議席数を回復したいと考えるのは自然です。
かつ、中国が日本への制裁をしつこく続ける中で戦略的な外交を進めるためにも、政権への国民の信認を高めて権力基盤を強化することが不可欠です。
もちろん、そうした政策の要因以外に、高市内閣の支持率が高いうちに勝負しようと思った側面も当然ながらあるでしょう。
ただ、それはすごく勇気ある決断でもあります。高市内閣の支持率が70%超と非常に高いのに対し、自民党の支持率は30%程度で前政権の頃と変わらず低いままだからです。私は昨年の参院選に自民党から立候補して全国を回り、いかに自民党が多くの国民から見放されているかを誰よりも実感しましたが、数字からはその状況がまだ変わっていないのではないかと心配になります。
高市首相への期待でそれを一気に払拭できるのか、今度の衆院選は本当に天下分け目の戦いになります。高市首相は経済でも外交でも正しい政策を進めているので、日本をもっと明るくするためにも頑張って欲しいと思います。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。
