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自民維新の合意にインテリジェンス政策があるがご見解を伺いたい

 自由民主党と日本維新の会の連立政権合意12項目の中にインテリジェンス政策が盛り込まれ、内閣情報室の格上げ、対外情報庁の創設、スパイ防止関連法案の検討開始と法案策定成立などを目指すとされています。国内における防諜対策はランサムウェア被害の多発などからみても不十分で、対策強化には賛成であるが、この合意内容で諜報対策が強化できるか心配な面もあります。勿論、公安調査庁、警視庁公安部、道府県警察本部外事課は公務がやりやすくなるであろうと想像できるが、国内最大手総合探偵社創業者であるBOZZ様、造詣が深い岸先生のご意見、ご見解を伺いたいです。 リーガル

 

 リーガルさん、ご質問ありがとうございます。

 日本はG7の中で唯一スパイ防止法が存在しないなど、リベラル勢力の反対などで脆弱な安全保障環境にあった日本で、ようやくインテリジェンス政策が強化されるのは私も喜ばしく思っています。

 というのは、私自身、かつて米国のインテリジェンスに接していた経験から、保守・リベラルという政治思想に関係なく、国家が安全保障の観点からインテリジェンスを強化するのは当たり前と常々思っていたからです。

 1990年代後半に北朝鮮と交渉する国際機関に出向していた時は、米国の情報機関の依頼で、北朝鮮に出張すると現地での情報収集に勤しんでいました。

 また、出向を終えて日本政府に復職した後もそこと付き合いが続いたので、米国が日本でどう情報を収集しているかも学びました。90年代末といえば米国はアジアの安全保障を今ほど重視しておらず、また日本はバブル崩壊後のダメダメ状態でしたから、日本で収集する情報などないかと思っていたら、大使館員のみならず様々な形で人を送り込み、経済関連を中心にしっかりと情報収集していました。

 ちなみに、国際機関出向時に私の彼女だった米国人が情報機関にスカウトされたのですが、その時は、彼女の身分や思想の調査に1年近くもかけるのを横で見ていて、そこからも米国のインテリジェンスの凄さを実感しました。

 これらの経験から感じるのは、連立合意の内容はインテリジェンス政策の強化に不可欠ですが、逆に言えば器や体制を整えるという政策のハード面が中心で、政策の第一歩に過ぎません。より重要なのは、インテリジェンスのノウハウや能力ある要員の充実・強化という政策のソフト面です。ただ、それは一朝一夕には実現できません。当然ながら時間がかかります。

 だからこそ、同盟国でインテリジェンスのプロの米国にどんどん教えを乞い、かかる時間を少しでも短縮して、日本のインテリジェンス政策をハードとソフトの両面で短期間のうちに強化してほしいと切に願っています。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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