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『知的障害者と性犯罪』精神科医ヤブ

 

知的障害者が性犯罪の被害に遭った場合、健常者より悲惨な扱いを受けることがある。そんなケースを2例紹介したい。Kさんは知的障害のある30代後半の女性で、田舎町で父親と二人暮らしをしていた。そんなKさんが妊娠したことから、トンデモない真相が曝露されることになってしまった。

対応した医師や看護師が尋ねても、Kさんにはお腹の子の父親が誰か分からなかった。複数の男性とセックスしていたからだ。ただし、決して不特定多数ではなく、数名の特定集団であった。その集団とは……、

父親の友人

なんとこの父親、自分の友人らに声をかけて、2000円から3000円でKさんに売春をさせていたのだ。父親は当時70代前半、友人らも当然70歳前後である。年老いた男たちの集団が、老後の楽しみとばかりに入れ替わり立ち替わりでKさんの体を弄んでいたのだ。このゲスなジジィどもがどう処罰されたかまでは分からない。また当のKさん自身は事態の重大さに気づいていなかった。私はKさんを治療したわけではなく、その後の生活をどうするかで福祉とともに関わった。現在のKさんは父の元を離れ、障害者施設で生活している。ちなみに子どもは中絶した。

Mさんも知的障害のある20代の女性で、ある夜、作業所からの帰り道でレイプされた。携帯電話を壊されたMさんは、裸のまま泣きながら近所の民家に助けを求めた。その後、あっさりと犯人は捕まった。

激怒したMさんの母親が加害者を告訴したことで、Mさんは警察から根掘り葉掘りと事情を聞かれることになった。しかし知的障害のせいでうまく説明できず、記憶の混乱も多かった。そのせいで警察からは「さっきの話と違う」「なんで話が変わるんだ」と問い詰められ続けた挙げ句、うつ状態になってしまった。まさにセカンドレイプである。結末はさらに後味が悪い。なんと加害者も知的障害者だったのだ。そして責任能力がないとして不起訴になった。Mさんの母は診察室で、告訴してもMさんを二重に苦しめるだけだったと悔しさをにじませた。

性犯罪は健常者でもあまり表沙汰にならないが、知的障害者の場合、こういう悲惨なケースもあるのだ。

 

ヤブ

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