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必修科目未履修問題の実態に迫る

高校で必修のはずの科目を生徒に履修させていなかったケースが全国各地に見られるということが、このところの一連の報道で明らかになってきています。昨日は、多田が記事にしていましたが、もう一点記事にします。


必修科目の未履修があった事例の一つに、東京都の私立城北高校があります。

文部科学省の定めるところによると、「公民」では、「現代社会」を履修するか、「政治・経済」と「倫理」をセットで履修するかの、いずれかを選択しなければなりません。この高校では一年生で「現代社会」を履修したことになっています。ところが、実際には「政治・経済」のみを教えていて、「現代社会」や「倫理」を履修していないという実態があります。「政治・経済」だけでは「公民」の単位を満たしたことにならないので、明らかに不正です。

実はこの高校、他の教科についても同様の不正が複数あります。例えば、「地理歴史」では「世界史」と、「日本史」か「地理」の一方が必修なのですが、実際には履修していないはずの「日本史」が成績上では履修単位として記されていたりします。上記の「倫理」にしても「日本史」にしても、生徒は教科書さえ購入していないとのこと。とはいえ、この記事は単に不正を暴露することが主な目的ではないので、ここまで。

このような実態を、予備校関係者はどのように見ているのでしょうか。大手予備校の「河合塾」に勤務する、ある講師は言います。

「最近になって突然話題になっていますが、このようなことは本当に昔からありました。特に英語や数学に力を入れている進学校であれば、大抵の学校がやっているのではないでしょうか。言い訳の口実として教科書だけ購入させ、実際には全く使いません。成績表では、未履修科目の科目名は残しておいて、その欄に実際に履修した科目の成績を記入するという手口がよく使われています。あるいは、成績表では実際に履修した科目のみ記されていても、大学に提出する調査書では、履修科目を偽って記入するようです」


必修科目を未履修のまま卒業することには、どのような問題があるのでしょうか。この点について、公務員試験対策予備校で教える大学関係者が興味深いことを話してくれました。

「受験に力を入れている学校が必修の科目を教えないのは、その科目が受験に使えないから。受験どころか、大学に入ってからも役に立たないものもあり、倫理なんかはその典型。丸暗記ばかりで、大学で教える哲学や倫理学のような、受講者が自分で考えるという要素が大変乏しい。実は公務員試験などで出題される一般常識なども同じレベルで、高校の時に倫理を履修しなかったような人たちが、慌てて予備校に来る。大学で開講されている「哲学史」とは異なり、学術的に見れば、「倫理」の教科書に書かれていることの大半は不正確な記述や誤りばかり。そのような内容を必修とすることに、どれほどの意味があるのか。高校で教えたところで、丸暗記の生半可な知識は増えるかもしれないが、その人の倫理観を育成できるとはとても思えないし、大半の教師もそれは分かって教えている」


成績表や調査書の不正は問題がありそうですが、役に立たない知識を詰め込むだけという教育のあり方そのものも、もっと議論の対象になるべきではないかと思います。

 

山木

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