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「頂き女子りりちゃん」詐欺事件 -負の連鎖は断ち切れないのか-

「りりちゃん」こと渡辺真衣被告は、マッチングアプリなどで知り合った男性3人から約1億5,500万円を騙し取った罪で逮捕・起訴され、懲役9年、罰金800万円の重い判決を受けました。

被害男性らは、りりちゃんが借金に苦しみ深刻な病気に蝕まれていると信じ込み、「かわいいりりちゃんのためなら」ということでお金を支払ったようです。りりちゃんは被害男性らを「おぢ」と呼び、彼らが恋愛感情を抱くように仕向けることにすこぶる長けていました。

また、男性からお金を騙し取ることを目的とした『頂き女子』と呼ばれる独自の詐欺マニュアルを作成し、一般の女性たちに売り捌いてはお金を儲けていたようです。驚くべきことに、ターゲットになりやすい男性の特徴、お金を払いそうな男性から恋愛感情を引き出す方法、金銭をむしり取る具体的なやり方などが克明に記されていたそうです。

りりちゃんのこうした態度や行動の背後には、なにか男性への奥深い「憎しみ」や「失望」があるように思われますが、その正体はなんでしょうか。どうやら、りりちゃん自身がホストクラブ通いにのめり込み、多額の金銭をホストに貢いでいたそうです。

ホストというのは、女の子がどれだけの金銭を「貢ぐか」で女の価値を決める職業です。あるホストは筆者にこう言いました。

 

ホスト「俺らのビジネスはいかに女の子の恋愛感情を引き出すかが勝負。そして女の子の恋愛感情が成就するかしないかはお金次第。すべてはどんだけお金使うかでしょ」

 

重要なポイントなので繰り返しますが「女の子の恋愛感情が成就するかしないかはお金次第」。

は? 

ちょっと意味がわかんないけど、そんな薄っぺらいもんが「恋愛」なら、「恋愛」とは、ホストと付き合うステイタスと、湯水のごとく失われていくお金との間でもがき苦しむ「もん」に過ぎないではないか。

しかしちょっと待って。冷静に考えてみると、りりちゃんと「おぢ」との関係は、ホストとりりちゃんの関係と非常に似通っています。つまり、りりちゃんもまた、お金を多く支払えば支払うほど、ホストからの愛情を得ることができるという立場に立っていたわけで、その意味では苦難を抱えていたはず。

ああ、りりちゃんは自分がホストによって味わされた苦難を、赤の他人である「おぢ」に対しても味わわせていたわけですね。人間とは、なぜもこう、自分の受けた苦難を他者にも味わわせることに情熱を注ぐのでしょうか。こういった負の連鎖は詐欺だけでなく、さまざまな現象で引き起こされます。例えば、幼児・児童虐待も、DV(ドメスティック・バイオレンス)も、依存症もそう。

いったい、どうしたら人間は負の連鎖を断ち切ることができるのでしょう。


りりちゃんYou Tubeより。

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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