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「大食い」を競う番組、もうやめた方がいい

たまたまあるフードファイターさん(仮称・Aさん)と知り合い、当時のお話を伺う機会がありました。全盛期は、出演料や動画再生回数が伸び続け「それは儲かった」とする一方で、とにかく莫大な量の食べ物を短時間で詰め込むという命懸けの戦いであったこと、常に視聴者を驚かせ楽しませなければならない重圧があったこと、などをお聞きして大変驚きました。私は「いくらでも食べられる特異体質の人なのかな」くらいの認識しかありませんでしたので、これほどまでにフードファイターさんの心身にかかる負担が大きいこと自体が衝撃だったのです。

 

「若さもあってがむしゃらに」と振り返るAさんは、消化不良・胃もたれ、ハイリスクな生活習慣病などの内臓への負担だけでなく「メンタルがけっこうやばくて深刻だった」と語ってくれました。というのも、たくさん食べるためには胃の中のものをいったん「リセットしなきゃならなくて」ということなのだそうですが、どうやら食べたものを吐き出す必要があるという意味らしいです。当然のことながら食べれば体重が増加することも気になってしまい「食べたらリセットするのが当たり前」になってしまったのだそう。

メンタルが抑うつした状態になってしまうこともあったようです.本当は食べ続けることによる心身の負担を認識しながらも、結局は食べ続けたすえに「リセット」する状況なわけで、摂食障害に似た症状にも見られます。お世辞にも心身の健康のバランスが保たれているとは考えられません。

Aさんから伺った話を確かめるため、かつて「大食い番組用にお店を貸して欲しい」と誘われたことがある都内某店の店主Bさんにもその時の様子をお伺いしました。Bさんは、「番組スタッフが確認したのはトイレの位置」であったとした上で、「出演者がすぐに駆け込める位置であることを確認してたみたい」とおっしゃっていました。Bさんは「心を込めて作った料理をすぐに出しちゃうだなんて板前として許せない」として「番組への出演は辞退した」と言います。

「大食い番組」は大量の食材が一度に失われます。その多くが「トイレ」で「リセット」されてしまうのだとすると、食料生産者の努力も、店の料理人の真心も、フードファイターの心身も、一瞬にして消費されてしまうに過ぎず、とても持続可能な社会とは思えません。これからは大量消費よりも「食べる楽しみ」を伝える内容にシフトしていくべきです。またお店や出演者の負担にも配慮すべきです。大食いをやめ、その代わりにフードロス削減に貢献する内容を取り入れて欲しいと強く願います。私たち視聴者も大食い番組を見るだけでなく、その裏側にある問題点にも目を向ける必要がありますよね。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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