先日、「匿名・流動型犯罪グループ」(以下、「トクリュウ」)による、いわゆる「闇バイト」に加担しないでほしいという趣旨の記事を書きました。以後、警察庁は闇バイトであることを知らずに誘導されてしまう人を減らすため、よりリアルな闇バイトへの誘導回路を示す必要があるという見解のもと、具体的な実行役募集の事例を公開しました。改めて「闇バイト」への誘導回路がどのように存在するのかを「X」で調査してみることにしました。
調査の結果、不特定多数の人たちがアクセスする「X」には「即金」「高待遇」「副業」「20万~都内某所」「お金配ります」「ホワイト案件」(条件が良く、安心して働ける案件)など、高待遇かつ単発的なアルバイトを募集する投稿がかつて多数存在していたことが確認できました。これらの多くはトクリュウによる「闇バイト」の募集や告知である可能性が高く、現在は以下のようにアカウントも投稿も、法的な要請に応じて表示制限が加えられております。 これらは「X」を媒介として、警察庁が公開したような「シグナル」「テレグラム」などの秘匿性の高いアプリに誘導されることを示すものです。
いずれも極めて秘匿性と高いセキュリティを特徴とするものですが(前者がアメリカ発、後者がロシア発のメッセージ交換アプリです)、秘匿性の高さの裏付けとして個人を特定する仕組みが備わっているため携帯電話番号などによる認証が厳しく管理されています。加えて、トクリュウの仕組みも個人情報を明らかにすることで「闇バイト」を斡旋するシステムですから、個人情報は二重に特定されてしまうことになります。
繰り返しになりますが、この調査は「誘導されない」ことを目的としていますので、いたずら半分でアクセスすることは止めてください。誘導された側の人たちも、「何も知らなかった」ことを理由に法的責任を免れることはできません。もちろん、「X」から「シグナル」「テレグラム」などに誘導されただけでは刑法に抵触することはありませんが、募集内容が明らかに違法な目的をほのめかすものであれば、警察が捜査を進める際には疑わしい行為として記録に残り、監視対象となる可能性があります。
「シグナル」「テレグラム」上で「叩き(=強盗)」「運搬役」など、明らかに違法である行為が説明され参加意思を示した場合は違法行為に加担する「意図」が確認され、犯罪準備段階とみなされることになります。刑法における「共謀罪」に近い概念で、犯罪計画への共謀や加担の意志を示す行為が確認されると違法性が強まります。無論、指示役から指示を指示を受け犯罪行為を開始したら刑法の「予備罪」や「準備罪」に該当することは明らかです。未遂や既遂に関わらず、刑法に基づき詐欺罪などの処罰対象となりますから絶対にやってはいけません。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。