スーパーマーケットでの無差別殺人事件(上海・9月30日)、35人が死亡した車暴走事件 (広東・11月11日夜)、切りつけで児童8人が死亡した事件(無錫・11月16日午後6時半ごろ)など、中国で無差別殺人事件が頻発しています。
実は中国では、刑事事件が2010年ごろからうなぎのぼりに増え続けています。
出典:中国国家統計局
無差別殺人は、格差、失業率、閉塞的社会など、経済状況の悪化による社会的な不安を背景に連鎖すると考えられますが、それと同等に、もしかしたらそれ以上に恐ろしいのは、国家による人民の統制と抑圧です。
驚くべきことに中国では、すでに反体制活動の監視やテロ対策という目的の名のもとに個人資産、支払い動向、SNSの利用状況、商品の購入履歴、思想信条、おまけに個人のDNAに至るまでを収集しています。もし私たちが中国で個人情報が抜かれることを拒否しようにも、社会の仕組みそのものが監視社会に加わることを前提として構築されているため従わざるを得ないのです。このような監視体制がこれまで以上に強化されるのは非常に恐ろしいことです。
例えば、ある特定の個人や集団を「秩序を乱すもの」として吊し上げることも可能です。「吊るしあげ」は、ときに市民の不満を逸らすための「必要悪」として、ときに敵への「見せしめ」として利用されるかもしれません。「吊し上げ」は、往々にして政府に批判的な個人や集団を対象としており、政敵を排除するための口実として利用される可能性もあります。
ほかにも、「内乱を誘発する工作をした」などの口実により、外国人をスパイとして捉えることに利用されるかもしれません。実際に、アメリカやその同盟国のジャーナリスト、ビジネス関係者、学者が拘束されるケースが後を絶ちません。
このように、中国の監視体制は犯罪抑止や社会秩序の維持という名目で強化されているものの、その実態は個人や集団に対する国家の統制強化です。このような潮流は、市民の自由やプライバシーの侵害を招き、社会不安や抑圧感をさらに深めることになるでしょう。
また外国人を標的にすれば国際的な緊張を高めることになり、日本においても経済や安全保障の影響が免れません。特に日本企業にとってのリスクは大きく、対応策が急務です。中国の動向が日本を含む国際社会に与える影響について、慎重な監視と議論が求められています。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。