日本ではあまり報道されませんが、米国(&イスラエル)のイラン攻撃では、米国宇宙軍(Space Force)が大活躍しています。
IRセンサー搭載の衛星、レーザー兵器などの最先端技術が使われているので、3日でイラン国内の1700以上の攻撃目標を破壊、イランによるドローン攻撃もほぼ撃墜、開戦から4日で米軍の犠牲者も僅か6人、と大きな戦果をあげています。
では、この攻撃はいつまで続くのでしょうか。当然誰にも分かりません。トランプが4週間という攻撃期間を明示したのは、3月末の米中首脳会談までに終わらせたいということでしょうが、ハメネイ師の後継者が誰になるか(対米強硬派の次男になるか)で大きく変わるはずです。
それはともかく、問題は、日本がこのイラン攻撃に対してどのような外交政策・通商政策のスタンスを取るべきかです。
日本は石油輸入の大半を中東、ホルムズ海峡経由に依存しているので、通常は中東で問題が起きるとエネルギー安全保障が最優先になりますが、今回は違うように思います。その理由は、米国のイラン攻撃は結果的に、イランと親密な中国を封じ込めることにつながるからです。
日本にとって外交上の最大の課題は、いかに中国と対峙していくかです。従って、トランプのイラン攻撃を支持し、その延長でトランプに中国封じ込めを促すことが、国益の観点から最重要となります。
そう考えると、3/19の日米首脳会談はそれを実現する絶好の機会なのです。イラン攻撃がこのタイミングで始まったことで、日米首脳会談は日本にとって大きな成果を実現できる可能性が高くなったと思います。
こう言うと、米国のイラン攻撃は国際法違反、反目する他国のトップを殺害するのは民主主義の観点から論外、日本もそうした正論を主張すべき、といった批判が出ると思いますが、そのような批判はまったく意味ありません。
というのは、外交政策・通商政策ではリアリティが最も重要だからです。強固な日米同盟なしに中国には対峙できません。トランプは王様状態なので、トランプの逆鱗に触れたら大変なことになります。
そうしたリアリティを踏まえると、特に今回のイラン攻撃について理想論を掲げることは、無意味であるのみならず日本の国益の観点から有害となり得るのです。
ちなみに、リーガルさんから日本の対米直接投資とトランプ関税について質問をいただきましたが、それらの問題についてもリアリティの観点から考えるべきではないかと思います。
2月18日に日本から対米投資を実施することが発表された。日本企業にとっては日本政府の支援が受けられ、経済安全保障の強化や日米でのサプライチェーンの共有などのメリットもあるが、一方で国内投資の不足、米国に投資した額以上の収益を生まない可能性も言われている。本件について経済政策に精通していない人にも分かりやすくご説明頂けると嬉しいです。
5,500億ドル(約80兆円)の対米直接投資の第一弾(ガス発電所、石油輸出施設、人工ダイヤモンド製造施設)については、ご指摘のように日本にとってそこまで大きなメリットがある訳ではありません。
ただ、そもそもこの直接投資は、トランプ関税の税率を低くして自動車などの輸出産業を守る代償であることを考えると、直接投資自体に大きなメリットを追求し過ぎるべきではないと思います。
ついでに言えば、トランプ関税が米国内で違憲となったのだから、対米直接投資の枠組み自体も見直すべきではという主張もありますが、国家間の合意を前提条件が変わったから反故にするというのはあり得ません。かつ、そもそもそんなことをしたら、トランプの逆鱗に触れて日米同盟に悪影響が生じるだけだからです。
2月20日に米国の最高裁がトランプ政権の相互関税は違憲との判決を出したので、企業が納付した関税の返還請求が行われると考えられる。ただ、自動車や鉄鋼・アルミニウムなどへの関税は判決の対象外である。日本企業や日本政府(経済産業省)は今後どうされると思われますか?
関税の返還は、米国政府と関税を払った企業の間の問題なので、企業が裁判などを通じて返還を求めることになります。その際、日本政府が米国に対して返還を強く求めるというのは、起きないのではないかと思います。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。
