先日の米中首脳会談は本当にガッカリでした。世界の二大国のトップが会うのに、台湾問題などグローバルな課題では表面的な主張を交わしただけ。米中関係でも中国の対米貿易黒字削減などマクロ的な課題での突っ込んだ議論はなく、中国による米国産品の購入増や米国への投資が取り沙汰されただけでした。
なぜそうなってしまったか。トランプ大統領が米国の大統領というより完全なビジネスマンのモードになっていたからではないでしょうか。低支持率に喘ぐ中で11月に中間選挙があるので止むを得ませんが、ではトランプの外交の酷さは今回だけで終わってくれるでしょうか。
今考えると、第1次政権の時のトランプはしっかりした大統領でした。9年前の米中首脳会談でも、中国の市場開放など国レベルの真っ当な主張をしています。当時は政治経験豊富な陣容が脇を固めていたからではないでしょうか。
第2次政権ではそれが様変わりです。イランとの開戦決断に至る政権内の議論の経緯からも明らかなように、周りはイエスマンばかり。今やトランプは王様状態で、大統領というより本来の気質であるビジネスマンの要素の方が目立ち、政権全体もそうなっているように感じられます。
それを象徴する例を挙げておきましょう。イラン戦争は日本をはじめ世界経済に甚大な影響を与えていますが、トランプ政権内で中東和平を担当するのはウィトコフ中東担当特使と、トランプの娘婿のジャレッド・クシュナーです。
しかし、ウィトコフは不動産投資家、トランプのビジネス仲間で政治・外交経験ゼロ。クシュナーに至っては、政治経験ゼロのみならず米国政府での正式な肩書きもありません。そういう人たちが、何かと言うと“ディール”という言葉を連発しています。
更に言えば、イランとの和平交渉の仲介役をパキスタンが担っているのも、よく考えたら不思議に感じませんか?パキスタンはこれまで米国との外交関係はどちらかと言えば疎遠で、中国との関係の方が圧倒的に深いのです。
実はパキスタンは、トランプが大統領に返り咲いて以降、水面下で米国に急速に接近してきました。その象徴が、ウィトコフ主導で成立した、パキスタン政府が所有するニューヨークの一等地のホテルの再開発を米国と共同で行う契約です。ウィトコフが設立し息子が引き継いだ仮想通貨の会社とも包括的な契約を結びました。
https://www.nytimes.com/2026/03/26/us/politics/trump-pakistan-iran.html?searchResultPosition=2
その延長で外交手腕がそれ程でもないパキスタンが仲介役を務め、米国側は“ディール”一本槍で短期決着を狙っているのですから、常に長期的視点で交渉に臨むイランと外交交渉のみで停戦が早期にまとまる可能性は低いように思えます。その間ホルムズ海峡の自由航行が実現しないとなると、世界経済の混乱も続きます。
このように考えると、2期目のトランプは本当にダメだと思ってしまいます。それでも、そのトランプと向き合い続けなければならない高市総理の心労は幾許のものか。。。気の毒になってしまいますね。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。
