
「亡くなってから1か月以上経って見つかることも珍しくありません」
そう話すのは、関東で特殊清掃を請け負うAさんです。これまで数百件の孤独死現場に立ち会ってきました。孤独死と聞くと、高齢者を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、40代、50代、中には30代の現場も少なくないといいます。
「年齢よりも、人とのつながりがあるかどうかなんです」
発見のきっかけはさまざまです。郵便受けに郵便物があふれ、異臭を感じた近隣住民が通報するケース。家賃が振り込まれず、管理会社が部屋を確認するケース。勤務先に無断欠勤が続き、会社から連絡が入るケースもあります。
「誰にも気づかれず亡くなるというより、『気づかれるまで時間がかかる』という表現のほうが近いですね」
特殊清掃の現場は、テレビで見るような壮絶なものばかりではありません。生活の途中で時間が止まったような部屋も多いといいます。
冷蔵庫には食材が残り、洗濯物が干されたまま。テーブルには飲みかけのペットボトル。昨日まで普通に暮らしていた痕跡が、そのまま残されています。
「そういう部屋を見ると、『この人にも日常があったんだな』と考えてしまいます」
印象に残っている現場を尋ねると、Aさんは少し考えてから答えました。
「猫だけが生き残っていた部屋ですね」
飼い主が亡くなっても、猫は部屋の中で何日も過ごしていました。保護団体によって救われたそうですが、「命が助かって本当によかった」と今でも忘れられないといいます。
孤独死の現場に立ち続けるAさんは、「特殊清掃員の仕事は掃除だけではない」と話します。
「遺族が部屋に入れないこともあります。遺族の代わりに現場を整え、故人の思い出の品を探すことも仕事です」
孤独死は、決して特別な人だけに起こるものではありません。
近所付き合いが減り、一人暮らしが増える時代。特殊清掃員が見ているのは、「死」そのものではなく、人と人とのつながりが途切れた先にある現実なのかもしれません。

櫻麗
猫と紅茶があればご機嫌です
