大阪学院大学でのトラブル
今年も各地の大学入試センター試験会場で、トラブルが相次いだ。大阪学院大学(大阪府吹田市)では、英語のリスニングで問題が続発。受験生の1人が嘔吐したにもかかわらず試験を続行したことが発覚し、再試験の実施となった。また、試験中に監督者の職員の携帯端末のバイブレーションが作動したことにも、受験生から苦情があった。
大学ホームページでは、体調不良の受験生が試験中に嘔吐した件を、以下のように説明している。「本学は、監督要領に記載の内容を理解した上で、その場の状況に鑑みて行動し、その時点で試験室の受験生全員の解答を止めさせ、再開テストに備えさせることはしませんでした」。だが、試験実施後、本件が問題視された。
その結果、独立行政法人大学入試センターは、希望者を対象に再試験を実施することを大学に指示した。また、携帯端末のバイブレーションの件について、「同大学は大学入試センターと協議した上で、『生活音の範ちゅうだ』として再試験は実施しないとしている。同大学は職員に対し、口頭で厳重注意した」(読売新聞・2018年1月17日)。
嘔吐した受験生への対応
以上のような大阪学院大学の対応を疑問視する声が、別の大学の事務職員から当サイトに寄せられた。情報提供者によると、受験生が嘔吐した場合の対応について詳細が定められたのは、2016年のセンター試験だったという。この年、ノロウイルスが流行したことが背景にあった。
センター試験を実施する大学では、試験の実施に関わる詳細が記された「監督要領」という分厚い冊子が、関係者へ事前に配布される。その中身を部外者やネット上に公開することは、厳しく禁じられているという。その他、監督要領に記された注意点をまとめた動画も用意されているそうだ。
各種のトラブル発生時の対応については、上記の監督要領に以前から多少の記載があった。だが、2016年のノロウイルスの流行に伴い、「試験時間中に受験者が嘔吐した場合の基本的な対応について」と題する文書が、試験実施前に各大学へ配布された。このたび、当サイトではその実物を入手することに成功した。
嘔吐が「微量」、「少量」、「多量」、それぞれの場合の対応手順が示されている。その詳細を記すことは控えるが、嘔吐した受験生及び他の受験生たちへの対応方法、清掃時の注意点などが書かれている。情報提供者によると、これ以降、嘔吐の問題への対応方法を記したページが「監督要領」に設けられたという(ただし、上記の文書ほどの詳しい説明はない)。
このように、嘔吐時の対応については詳細が定められている。それゆえ、「大阪学院大学の対応は、杜撰だったと言わざるを得ません」と情報提供者は述べる。「監督要領に記載の内容を理解した上で」の対応と大学側は主張するが、たとえ「理解」していたとしても、それを適切に実行できていなかったということだろう。
携帯端末の管理について
携帯端末のバイブレーションの件も、「大阪学院大学の判断は甘すぎる」と情報提供者は指摘する。もし試験中に受験生の携帯端末の着信音が鳴り響いた場合、監督者はその端末が入っている荷物を教室外へ強制的に持ち出すことが認められているという。監督者は荷物を廊下で待機する係員に引き渡し、試験後に受験生に返却する。
受験生に対しては、このように厳しい対処がとられているというのだ。一方、試験の実施に関わる職員にも、携帯端末のスイッチを必ず切ること、できる限り教室内に端末を持ちこまないことなどが、事前に通達されるという。そうした管理が徹底されていなかったのであれば、大学側の対応が不十分だったということになる。
まとめ
嘔吐の件も携帯端末の件も、監督者に不備があったことは明らかだ。だが、これらは個人の責任にとどまらない。試験を実施した大学側の、管理不行き届きという面もあることは否めないだろう。受験生たちが全力を発揮できるような環境を維持することへの配慮を、大学側には心がけてほしい。