「大学の教員って、こんなに簡単になれるの?」話題の職業ガイド、その真偽は


先日、『日本の給料&職業図鑑』(宝島社)が話題になった。各種の職業に従事する人々の給料や、仕事の特徴、就労方法などを紹介する書籍である。刊行は2016年だが、最近になって内容の一部がTwitterで取り上げられて反響を呼んだ。注目されたのは、大学の准教授について扱った項目だ。

 

 

「やばい、大学教員になるってこんなに簡単だったのか!」。そのようにツイートした女性は、大学に勤務する人物だ。当然、大学事情には精通しているはずであり、同書の記述が実態とかけ離れていると言いたかったのだろう。このたび、当該のツイートを見た大学教員(以下、「A氏」と記載)から情報が寄せられた。

 

 

准教授に関する項目に書かれていることには、やはり疑問があるという。その一つが、次の箇所だ。「大学院後期課程を修了します(ここで博士号は必要ありません)。その後、研究所に就職できれば、准教授になれます」。「後期課程」とは、いわゆる「博士課程」のことであり、「修士課程」を「博士前期課程」と位置づけている場合の名称である。

 

 


(1)研究所への就職?
上記の「研究所」が具体的にどのようなものなのか不明であると、A氏は言う。大学内に設置された各種の研究所を指すと解釈すれば、そこに就職できたからといって、正規雇用につながるとは限らない。むしろ、「研究所が特定のプロジェクトなどで募集するのは、任期付きのものが多いです」。

つまり、一定の期間に限った契約であり、終了後に再雇用される保証はない。たとえ職位は「准教授」であったとしても、契約期間が終われば解雇されてしまう。一方、「『テニュアトラック』といって、一定の成果を契約期間内に出せば、所定の審査を経て正規雇用されるケースもあります」。

「研究所に就職できれば、准教授になれます」と書かれていると、「研究所」への就職が最短ルートであるかのような印象を受ける。だが、実際にはテニュアトラックによる採用は、研究所ではなく、それぞれの学部で実施されていることも多い。また、最初に「助教」として採用され、やがて准教授になるというルートも一般的だ。

「研究所」という言葉を、民間企業や財団の研究機関を指すものとして解釈する余地もある。しかし、そのような研究機関に就職できたからといって、自動的に大学の准教授になれるわけではない。当人が十分な実績を出すこと、准教授への応募時にその業績が大学側に高く評価されることが必須であり、道のりは険しい。


(2)博士号の取得は重要
 さらに、近年の傾向として、博士号の取得が准教授の応募条件になっている場合が多いそうだ。「一部の研究領域を除いて、博士号を取得していないと非常に不利です」とA氏は断言する。「応募者によほど特殊な業績があって、それが審査時に評価されれば、博士号がなくても採用されるかもしれませんが、かなり例外的です」。そして、大学の任期付きのポストでも、博士号の取得者を主な対象としたものが増えているとのことだ。


(3)マスコミ・企業関係者の場合
また、以下の記述も不正確であるという。「教員免許が必要ないため、マスコミ関係者、社会人で企業社長なども准教授に選出されることがあります。そのため、ポストの空きがなく、現実として厳しいものがあります」。A氏は言う、「現役のマスコミや企業の関係者の採用は『客員』扱いが多く、ポストの空きとはほとんど関係がありません」。

 

 

ジャーナリスト、企業関係者、芸能人などが、「客員准教授」や「客員教授」として採用されることがある。これは、正規雇用の准教授や教授とは別枠である。大学が何らかの目的のために、期間限定で客員教員として迎えるものだ。ジャーナリストや企業関係者が、定年退職後に正規の教授職に招かれるといったこともあるが、それはまた別の話である。


(4)まとめ
「就職に至るまでの『困難』について、不確かな話が広まるのは困ります」とA氏は述べる。『日本の給料&職業図鑑』は、各種の職業についてユニークなイラストを交えて紹介しており、読み物としては面白い。だが、同書だけに頼るのではなく、志望する職業について自分で調べてみて、より正確な情報を把握することが大切だろう。


高橋 


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