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高市首相は積極財政を止めろという批判は正しいか

 日銀が利上げをしても円安が進んだことを受け、更なる円安・インフレ加速・金利上昇を防ぐため、高市首相は積極財政路線を見直すべき、消費税減税も断念すべき、といった声が評論家やメディアの間で高まっています。
 こうした意見は経済政策として本当に正しいのでしょうか。私は、マクロ経済の観点からは正しいものの、ミクロの観点からは間違っていると考えています。

ガソリン補助金は評判悪いけど低所得層の生活支援に必要
 評判の悪いガソリン補助金を例に考えてみましょう。補助金で価格を安くしたらガソリン需要が増えるだけ、ガソリン価格を上げて需要減らすべき、そんな補助金に月1千億円も使い続けたら財政は持たない、とよく言われます。日本のガソリン価格は元々安すぎる、欧州のガソリン価格は日本のほぼ2倍、先進国でガソリンの価格補助しているのは日本くらいとも批判されていますね。
 マクロの観点からはそうかもしれませんが、これらの批判には日本が“失われた30年”のダメージで凄まじいまでに貧乏になっているという視点が抜けています。物価上昇で生活が苦しい低所得層の人たちの立場に立って考えてみましょう。
 日本人の平均年収は478万円ですが、これは日本全国の平均で、地方では年収200〜300万円台の低所得層の方が多いのが実情です。
 比較のために他国の国民の平均年収を見ると(今の為替レートで換算)、米国は1,080万円、英国は865万円、フランスは778万円、ドイツは982万円と、日本よりよっぽど多いのです。
そして、平均年収が低い地方ほど車社会なのでガソリン・軽油の消費量も大きいことを考えると、これだけ貧乏になってしまった国で低所得層の方の生活を守るためには、ガソリン補助金はまだ必要なはずです。

低所得層の生活支援には給付付き税額控除の実現が不可欠
 もちろん、ガソリン価格を補助金で下げると、都市部の富裕層までメリットを享受してしまうという問題があります。富裕層の支援など不要なので、その観点からはガソリン補助金は望ましくありません。
 ただ、ガソリン補助金に代わる地方の低所得層の生活支援手段がないんです。政府はこれまで給付金というと、住民税非課税世帯を対象に自治体経由で配ってきましたが、住民税非課税世帯とは貧困世帯です。政府には、その水準を超える低所得層(例えば年収300万円まで)を対象に給付金を配る術も経験もないのです。
 これは前例の延長しかやらない政府の不作為の罪です。だからこそ、これだけ貧乏になってしまった日本では、高市首相の公約である給付付き税額控除(=最も正しい低所得層の支援策)が実現するまでは、ガソリン価格の圧縮幅は縮めるにしても、ガソリン補助金で地方の低所得層の生活を支援するのは必要ではないでしょうか。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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