公営住宅の建て替えで「環境に配慮」の計画、「住民の実態を無視」と疑問の声


「環境への配慮」ということが、社会の様々な場面で重視されている。環境への負荷を減らすこと自体は望ましいはずだが、問題はその実行計画が本当に適切なのかということだ。このたび兵庫県神戸市にて公営住宅の建て替えが決まったが、一部の住民から疑問視する声が上がった。その論点の一つが、「環境への配慮」ということだった。

神戸市垂水区の新多聞住宅は、老朽化に加えて耐震性にも問題があるとのことで、早期の建て替えが必要と判断された。情報提供者は、この公営住宅の住民だ。第1期の工事対象となった棟の住民への説明会が、2018年7月に行われた。だが、それ以外の住民も含めて、事前に要望を聞いたり話し合ったりする機会は設けられてこなかったという。

 

 

 

このように住民側の意向が十分に確認されないまま、計画が進んできた。情報提供者が納得しがたいと述べる事柄の一つが、建て替えに伴う「共同花壇」の設置だ。建て替え計画によると、設置の目的は「コミュニティ形成支援」である。ここで問題になるのは、共用スペースは自治会で管理するというルールがあることだ。

情報提供者は言う、「この公営住宅では、入居者の新規募集を停止していたことが判明しました。県が定める収入を超過すれば退去になりますから、新規募集の停止で人が減ります。自治会に入っていない人もいます。高齢化も進んでおり、誰もが園芸好きというわけでもありません。こんな状況で、共同花壇の維持など無理でしょう」。

「有害な外来種の排除など生物多様性に配慮した植栽」も計画されている。この点についても、情報提供者は懐疑的だ。「生物多様性などと言えるほどの自然環境は元々ありません。土手に樹林がありますが、カラスと野良猫の隠れ場所で、ゴミを荒らされたりフン害が出たり・・・。有害な外来種としては、セアカゴケグモの目撃例がありました」。

 

 

 

その他にも、省エネ型の設備機器、太陽光発電、県産木材の使用など、「環境への配慮」が強調されている。とはいえ、太陽光発電は敷地内で1か所のみだ。もちろん、情報提供者は「環境への配慮」それ自体に反対しているわけではない。しかし、上述のような計画は公営住宅の現状から判断して、妥当と言えるのかと疑問を呈する。

 

 

当サイトでは、県の公営住宅課に話を聞いた。共同花壇の完成後、その管理・運営は自治会が行うことになるという。情報提供者が指摘した点を尋ねると、「使わなかったとしても、その構造物が残るだけです」と担当者は述べた。つまり、共同花壇のためのスペースを整備後、それを実際に使うかどうかは自治会の判断に委ねるというのだ。

「生物多様性に配慮した植栽」については、建て替え時に新たに行う植栽には外来種を用いないという意味であるという。外来種を除外するのは、建て替え計画に際してその場所に育てたいと考えている植物の繁殖を阻害する可能性があるためであると、担当者は説明した。なお、選定する植栽の基準に関する資料は、外部に公開していないとのことだ。

ちなみに、建物の整備が行われない一部の場所では、現状の自然環境がそのまま残る。ただし、そこに外来種が増えているなどの実態が確認された場合には、伐採する可能性もあるそうだ。いずれにせよ、建て替え計画で示されている「生物多様性」というのは、あくまでも今後行われる植栽に限定して述べたものであるという。

以上の回答内容に対して、住民の賛同はただちに得られるだろうか。「花壇を使わないならば、最初から作らない」、「その分の費用を他に充てる」といった選択肢もあり得たかもしれない。このような点について、事前に住民側と十分に話し合い、同意が得られた上で計画を進めるべきだったのではないか。計画実行までの間に、可能な範囲で改善が図られることを期待したい。

 

高橋