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『性欲をもてあます男たち』~精神科医ヤブ

フィリピンで25年間にわたって、合計1万2千人を超える女性(14歳から70歳)を買春したとして、元中学校校長が逮捕された。呆れるほどの性欲である。

同じように性欲の強い男性を患者として何人かみたことがある。一日中オナニーを繰り返す知的障害者、毎日のように妻と数時間におよぶセックスをする60代(疲れ果てた妻が病院に連れてきた)、強姦・強姦未遂を繰り返していた統合失調症。こんな性欲をもてあます男たちに何か治療法はあるのか?

知的障害者には「オナニーは人目につかないところでするように」と繰り返し指導していった。60代男性には抗うつ薬を処方した。毎日の性行為が強迫性障害の手洗いや戸締り確認と似た印象があったのと、抗うつ薬の副作用である性機能障害にも期待したからで、それなりに効果があった。統合失調症の男性は、何回か服役した後に発症して今は精神科に強制入院となっている。面白いことに、強制的に閉鎖環境におかれた彼は、「幻のチンコが俺の尻の穴にぶち込もうとしてくる」と被害的な幻覚妄想を訴えるようになった。発症前から繰り返していた強姦も、もしかすると何らかの精神病理が影響していたのかもしれない。

元校長の話に戻すが、彼はきっと自分を正当化する「合理化」という心の防衛を行なっていたのだろう。フィリピン人の30%は平均月収が日本円で6000円から1万5千円程度で、フィリピンでの買春は1人2000円くらいらしい。「買春が悪いことくらい分かっているが、それでも俺が買春しないと彼女らは飢え死にしてしまうじゃないか。これは必要悪という福祉だ」そんな風に考えていたのかもしれない。

確かに、フィリピンという国では、売春でもしないと生活できない人たちが多数いる。だから私はこの元校長をただのゲス野郎だと非難できない。もしあなたが、これを読んでもなお容赦なく彼を罵るのなら、同時にフィリピンの貧困層に届くような寄付をしてみてはどうだろうか。「今は金がない」「どこに寄付していいか分からない」「寄付先を調べる時間がない」あなたは、寄付をしないことについて、どんな「合理化」をするのだろうか。

 

ヤブ

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