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『他者を巻き込まずにはいられない人格障害の焼身自殺』精神科医ヤブ

6月30日、東海道新幹線で男性が焼身自殺し、その巻き添えで女性が1人亡くなった。
こういうニュースを知ると、痛ましいという思いとともに、精神科医としてあれこれ推測してしまう。

数ヶ月前にジェット機の副操縦士が自殺した飛行機事故について書いた時にも触れたように、こういうエネルギッシュな自殺をするような奴は絶対にうつ病ではない。
では何かというと、これはもう間違いなく人格障害である。

人格障害をごく簡単に説明すると、物ごとを知覚し、考え、感じ、他者と関わるなどの生き方が、平均から著しくはずれた人たちである。有名なのは死ぬと言ってはリストカットやODを繰り返すような境界型人格障害だが、その他にも「妄想性」「演技性」「自己愛性」「統合失調症質」「非社会性」などを頭につけた人格障害がある。

こうした人格障害の人たちでも「うつ状態」になることはある。ただし、それは彼らの人格の偏りのせいで周囲と協調できないことが原因というケースが多く、薬だけで解決することは少ない。本人が性格の偏りに気づき、少しずつ受け容れたり訂正したりすることが必要になる。また、事例は多くはないが統合失調症を発症することもある。精神科医としては、人格障害の人が統合失調症を発症すると厄介だな、と思う。ただでさえ人格が偏っているところに被害妄想が追い打ちをかけて、とんでもない行動に至るような気がするからだ。例えば今回の事件のような……。

統合失調症は通常若い頃に発症するが、統合失調症と似た病気に妄想性障害があり、これは中高齢でも発症する。いずれにしろ、この事件を起こした男性は基礎に人格障害(タイプは不詳)があり、さらに被害的な妄想を抱くような病気を発症していたのではなかろうか。この焼身自殺した男性が精神疾患だったという情報はないが、自宅周辺で奇異な言動を繰り返していたという近隣住民の話はあった。彼らが早めに保健所へ通報していても、あるいは自治体の保健センターなどが関わりを持っていたとしても、この事件は防げなかったのかもしれない。でも、もしかしたら万が一にも受診と治療が上手くいって男性は落ち着いて……と想像すると、なんだか残念である。

 

ヤブ

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