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『田代まさしの盗撮疑惑について』岡田斗司夫

この記事が載る頃には、「新事実が明るみに!」なんてことになっているかもしれないんだけど・・・

田代まさしが、盗撮疑惑でつかまり、書類送検された。
田代はすでに何回も逮捕歴がある。
「いくらなんでも、もうないだろう」と思われていた矢先の事件だった。

あきれ返っていると、その後、ヤフーニュースに新情報が載った。
あの書類送検は、勇み足だったかもしれない、というものだ。

駅のホームで「あれ?あれは、田代まさし?」と周りが注目していたところ、田代がたまたま、落とした財布だか、小銭だかを拾った。
その不自然な姿勢を見て、近くにいた人が「どうせまた、痴漢行為をしているに違いない」と思い込み、捕まえて駅の待合室に送り込んだ。
そのとき、田代は反論せず、容疑を認めてしまった。

本当に田代が携帯電話で盗撮していたのだとしたら、それに画像が残っているはず。だが、警察からは今のところ、証拠となる画像は公開されていない。

この記事を書いたのは「創」という雑誌の編集長:篠田博之さん。
篠田編集長は、安易な正義感で容疑者をバッシングしない。常に真摯なアプローチをくずさない取材姿勢を貫いている。
連続幼女殺人事件の時も、裁判を傍聴にいったり、宮崎勤の手記を載せたりして、ブームが去った後も追いかけ続けた。
冤罪事件にも義憤をもやし、取材の手をゆるめない。
孤高の編集長といえる。

言論系の雑誌では、昔、『噂の真相』が代表だったけれど。それがつぶれてしまった
その結果『創』は、様々な主張の駆け込み寺的な存在にもなっている。

篠田編集長の主張を読むと、田代さんは被害者だ。
「まだ断片的な事柄しかわかっていない状況で、報道やネットでの論調には強い疑問を感じた。
それに尾ひれをつけて拡散していくことに対しては、とりあえず何かせねばいけないという気持ちになった」
とあるから、義憤にかられ、雑誌編集長の立場をかけて発言していることがわかる。
僕も、この記事を読んだ瞬間は、「警察の勇み足じゃないのか?!有名人を目の敵にして、目立つとこでばっかり点数稼ごうとすんなよ!」とか、義憤に燃えてしまった。

が、あれから一週間、冷静になって考えてみる。
記事が載ったのは7月15日、その後、警察やマスコミから、新情報は出ない。
僕は、篠田編集長のことをよく知っている。
すごく「いい人」なのだ。

僕が昔、『創』で連載していたが、なんと2年半くらい原稿料が未払いだった。
催促すると、かなり遅れての振り込みがはじまった。
担当編集者が平謝りしていたけど、言論系の雑誌ならよくある話なので、気にしてはいない。
実はかつての僕と同様に『創』の原稿料をまだもらってない人は、この業界にまだまだいると思う。
でも、もう『創』で書かないなんて言いだす人はいない。
商業誌なのに原稿料が出ないのは、本当にまじめな創り方をしているからだ。
大メーカーからの広告は載せない。
宮崎勤の手記掲載で『創』が爆発的に売れたり、単行本がベストセラーになってりすることもあった。が、ブームにのって上手に立ち回っているわけではなく、10年以上も同じネタで取材を続ける姿勢を貫いている。
商業誌だけど採算度外視、いつも赤字なのだ。

だから、原稿料が遅れる場合もある。
そんな雑誌を、ず~っと続けている。
ライターはみな、なぜ払えないかわかっているから、払ってくれよ!と思いつつも、怒れない。
そして、次に原稿を頼まれたら、篠田編集長はいい人だからなぁ、と、また書いてしまうのだ。

篠田編集長の記事は、ヤフーニュースにまで載ったのに、他のマスコミがワッと飛びつくことがない。
同調する論調も見当たらない。
新証言も証拠も出ないから、当たり前かも知れない。

でも、僕はこう邪推する。
ひょっとすると、マスコミ各社は、こう考えてるのかも知れない。

ちょっと待て。この記事を書いたのは、『創』の篠田さんだ。様子を見たほうが良さそうだ。
田代まさしの関係者からきちんと取材をしたのだろうけど、篠田さんは並外れていい人だ。
「いい人」すぎて、騙されてるんじゃないのか?
田代まさしは冤罪かも知れない。でもうかつに報道して恥かくのもイヤだ。
第一、『創』と同じ姿勢をとってると、うちも原稿料が払えなくなるかもれない。
今は、篠田編集長の孤軍奮闘を期待しよう。

うん、マスコミ各社の気持ちはわかる。
僕も巻き込まれるのは本意じゃない。
田代まさし事件については「でも、創編集長はこう言ってるよ」「良く知らないけどね」あたりでお茶を濁しておこう。

 

岡田斗司夫

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