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『中国を中国と呼びたくないヒトのために』岡田斗司夫

戦前の日本では、中国のことを「支那」と呼んでいた。
中国人は支那人だし、ラーメンのことは支那そばと言ったりした。
ニュースや新聞などでは使われないけど、年配の日本人なら知っているはずだ。

ではいま、中国を支那と呼んでもいいのか。
これは微妙な問題で、僕が知っている限り30年位前から論争がある。
当の中国をはじめ、いろんなところからクレームが来るので、日本のマスコミでは「支那」という用語は使わないようにしている。
スマホやパソコンの漢字変換でも「支那」は出てこない。
少なくとも僕のiPhoneで「しな」を変換しても、出てこなかった。

「中国を中国と呼ぶことはおかしい。明らかに間違っている、だから支那と呼ぶべきだ」
と主張する人たちもいる。
中国というのは、「我が国が世界の中心」という意味だから、よその国が使うのは不自然だ、というのが彼らの主張だ。
他の国ではどう呼んでいるか。「チャイナ」だ。国連でも「チャイナ」。チャイナというのは、最古の統一王朝「秦」から来ている。

この「秦」日本では「支那」となった。
ところが、第二次大戦まえあたりから、中国を支那と呼んで見下したという歴史的事実がある。だから中国の人は、日本人に「支那」と呼ばれることにはすごく反発する。
でも、日本以外の国からチャイナと呼ばれることには反発しない。

僕としては、この経緯を知ってしまった以上、中国を中国と呼ぶのはあまり愉快ではない。
ところが一方で、中国のことを無理やりに「支那」と言い続けているのは、石原慎太郎をはじめ、みんなイヤなやつばっかりだ。
正しいかもしれないけど、あんなイヤな奴のグループに入るのもイヤだ。
かと言って、普通の人のグループに入って、中国のことを中国と呼ぶのも、なんか機嫌をとってるみたいでイヤだ。

なので僕は決めた。
それなら、あの国のことはカタカナのまんま、チャイナと呼ぼう。

だって、僕らはイングランドのことをイギリスと呼んでるし、ネーデルランドのことをオランダ、スオミのことをフィンランドと呼んでる。
その国自身が名乗る名前と、他国からの呼び名が違っていることは、珍しくない。
中国のことはチャイナと呼べばいい。
それが正しいわけだし、摩擦も起きない。

というわけで、以後僕は、中国のことはチャイナを呼ぶことに「決めた」。
僕が言う「決めた」というのは、以後、特に困った事態が起きない限り、続行するという意味だ。
数年前、選挙でどの党の投票するのかさんざん悩んだ結果、共産党に投票しようと「決めた」のと同じニュアンスだ。

あるときの選挙で、僕はさんざん悩んだ。
自民党に投票するのはイヤだ。だからと言って、何日も何日も誰に・どこに投票するのかを考えるのも効率が悪い。
僕が投票する動機は「現体制への批判」であって、そのために最適な行動をしたいだけなのだ。

で、思いついた。
わかった!僕は共産党に投票しよう。
それなら(失礼だけど)大勢に影響はない。棄権するよりはずっといい。
共産党に投票することで、何か悪い事態が起きると予測されない限り、僕は共産党に投票し続けよう。
もちろん、これは臨時措置なので、共産党がとんでもない政策を言い出すか、自民党がすばらしい政党になったら、僕も考え直す。
しかしそれ以降、不幸にも「考え直し」の必要はなかった。
僕は一貫して共産党に投票している。

それと同じように、中国のことをチャイナと僕が呼ぶことによって、何かまずいことが起きるまで、ずっとチャイナと呼び続けることにする
「蒙古」ではなくモンゴル。
「越南」ではなくベトナム。
だったら「中国」ではなく、チャイナでいいんじゃないかなぁ。

 

岡田斗司夫

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