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『オリンピック後の世界を予測する』岡田斗司夫

デューク大学にブレイン・マシン・インターフェース(BMI)研究所がある。
そこで「ネズミ4匹の脳をつないで並列処理をさせて、複雑な問題をとく」という実験に成功した。
『迷路の先に餌があるぞ』というような問題を、ネズミ一匹が解くよりも、4つの脳を並列で処理させた方が明らかに効率が良かったのだ。

なかなか考えさせられる研究成果だ。
ある理論が発表されたら、その理論が応用された結果、僕らの生活にはどんな影響があるのか、どんな恩恵をもたらすのか。
僕はこういうことを考えるのが大好きだ。
このBMI研究所の実験はなにを生み出すのか?
ちょっと未来を考えてみよう。

たとえばいま、わからないことや知らないことは、Google検索してウィキペディアやYahoo!知恵袋などで調べる。
大抵のことは、それでわかる。
ネット検索すると、いろんな質問やそれに対する答えは、既に書いてくれているのを見つける。
でもそれは、いわば「知のユニクロ」みたいなものだ。
すでにある問いと答え。
オーダーメイドでは無い。

ネズミでできるんだったら、将来、人間の脳を並列処理に使えるようになるかもしれない。
つまり、何百人、何千人、何万人が脳波ヘルメットをかぶって脳をつなげて問題を考えれば、瞬時に、的確な答えが出せるようになる。
そうなると、十年後かのバイトに、この「並列処理要員」が登場するかもしれない。
現在、マックジョブという言葉でしめされるとおり、ファストフードのバイトが誰にでもできる「残念な仕事」の代名詞となっている。
が、未来の「残念な仕事」はもっと残念なのではないか。
手に職もないし、考えるのも遅いし、表現もできない。
そんな仕事にあぶれた奴は、頭にヘルメットをかぶって並列処理要員になる。

そんな設定を使ったSFを、僕は読んだことも聞いたこともない。
そんな仕事って具合的にはどんなものだろう?それによる報酬は何なのだろう?

金持ちや有能な人がちょっと悩んだり、頭を使ったりする必要があるとき、並列処理を手伝って負担を軽くすることに使われる。
それとも、これまでのスーパーコンピュータがもっと速くならなければできないと言われているような問題、30日後の天気の完全予想するということにも、使うのだろうか?

100万人くらいの脳を並列処理で使えば、スーパーコンピュータを超えられるかもしれない。
ということは、100万人のバイトが必要ということでもある。

じゃぁ、その並列処理のバイトをした人がもらう報酬はなんだろうか?
ひょっとすると脳のなかに、ちょっとしたエッチな映像とか、おもしろい動画を送ってもらうことではないかな、と考えてみた。
または脳内で楽しめるネットゲームのコインやアイテムとか。

つまり、エッチな映像とか、面白い動画とかを見たいので、脳波ヘルメットをかぶってバイトする。
ソーシャルゲームのアイテムが欲しくて、いつのまにかセレブの「明日、なにを着ていこうか?」という判断の1部を処理させられる。
おそらく、バイトと気づかないような形で、バイトさせられるのだ。

今でも、ネットをのぞいていたら、知らぬ間に広告を踏んでしまうことがある。
未来では、それがもっと巧妙になっているのかもしれない。
たとえば、無料の並列処理世界でエッチな映像や面白い動画を見て遊んでいると、すごく気になる場所にドアがある。
そのドアを開けないと、次に進めないようになっていたりもする。
が、そのドアをうっかり開けてしまうと、そこで強制的に脳労働させられて、明日の天気を考えさせられたりする。
しばらく考えると開放されて、また楽しい並列処理空間が待っている。

これは「労働」だろうか?
「ゲーム」だろうか?

おもしろい並列処理空間であればあるほど、脳労働者の確保者数もふえるということになるから、ますます面白いものが開発される。
そして、一日中ネットづけ、ヘルメットかぶりっぱなしの人がますます増えていく。
いや、脳波ヘルメットだって、あっというまにカッコいいフォルムに変わり、キャップやヘアバンドぐらいの見た目に進化するだろう。

10年後の日本や世界を予想するのは、かように難しくて面白い。

 

岡田斗司夫

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