決死なんて大袈裟と思われるかも知れません。テレビのようにクルーがいるわけではないので臨場感が伝わりにくいですね。でも、テレビはカメラアングルを考えながらアクションしますので本当に危険なことはほとんどないのです。
私が今回スタッフを帯同していないのは、「本当の冒険とは」を表現したかったためです。ですので目に見えないものは文章で表現するしかないことをご容赦ください。
三日目、いよいよ箱根越えです。
雪のため道路が凍結、という情報。四輪ある車でさえ危ないのに自転車で行ったら、という不安。でも、夕方までに峠越えをすれば何とかなると判断して見切り発車しました。
1メートルもペダルをこげない登り坂が永遠と続きます。気が遠くなる、とはまさにこのことです。
その証拠にMTBでさえ一台も見かけませんでした。そんな急勾配をママチャリで行く私。車に乗った人が不思議そうに一瞥していきます。
この写真を撮るのが精一杯でした。
肩で息をしながら汗だくで登っていきます。
登板を初めて3時間、10キロほどの場所に小さな温泉宿がありました。
『あと数キロで頂上だ。』
そう思った私は宿に入って風呂を所望。
『このまま下りに入ったら間違いなく服が凍りついてしまう。』
汗でびしょびしょの下着を取り替えるためです。
女将さんに連れられて露天風呂へ。
客は私のほかに誰もいません。源泉は67度を超える高温です。
いくら水でうべてもすぐには入れないほどの熱さでした。
私は入浴をあきらめ着替えだけを済ませて宿のご主人に尋ねました。
あとどれくらいで頂上ですか?
そうだね
車で20分くらいかな。
え?
そこからまた登りが続くしね(笑)
笑うな。
く、車で20分・・・。
びゅんびゅん追い抜いていくあの車で20分・・・・・・。
すごいよ車を発明した人って。私は心底そう思いました。
ー 気がどんどん遠くなるBOSS ー
次号は恐怖の下り坂から一号線魔の落とし穴まで一気に報告です。