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男性の知らない世界 「ママ友」同士の親密で複雑な関係

 私の場合、ママ友との関係が始まったのは妊娠中でした。お腹に赤ちゃんがいるワクワク感や不安感を共有できる心強さからすぐに打ち解け、5人ほどのグループラインを開設しました。

 出産後、一緒に赤ちゃんの公園デビューをして、お揃いの「あぶちゃん」(赤ちゃんのよだれかけ)を買って、一緒に保育園の待機児童になって…。風邪をひいたら、コンビニでスポーツドリンクを買って届けたりしてお互いに融通もきかせています。だけど実は私たち、知り合ってからずいぶん経った今でも、ママ友の会社や、旦那さんの会社や、ご夫婦の経歴や学歴をまったく知りません。

 想像するに、5人のうちのひとりはご夫婦ともに五大商社勤務。夫の海外勤務の可能性をちょいちょい匂わせてくるし、裕福だし、ファッションセンスも素敵。あとは、メーカーの(多分)中間管理職、フリーランスの建築関係、日本の銀行勤務というところかな。そして私の夫はしがない研究者。

 これらはあくまでも想像の世界ですから真実は分かりません。逆にすべて開けっぴろげになってしまったら競争意識や嫉妬心が生まれ、負の出来事が引き起こされない。だからお互い、詳しいことは「聞かない」し「話さない」。あくまでも子どもを媒介とした関係であることを肝に銘じておくのが暗黙のルールです。

 一方で、ママ友同士がお互いに傷つけあうシーンにも頻繁に出くわします。

 例えば、同じ小学校に通うママ友のAとBもまるで姉妹のように仲が良かったのに、今ではお互いに目も合わせず陰で悪口を言い合う関係。そして悪口の「矛先」はママ友である場合も、その子どもである場合もあります。AはBの「プライドが高く」、「散財をする」生活環境についていけなくなったと主張します。中学受験のための進学塾がいかに高額であるかを自慢された挙句、「一緒に通おう」と誘われたことから決別することに決めたらしい。一方のBはAの子どもを、「表向きは良い子」だけど実は「受験のストレスをうちの子どもに向けてくる」という理由で子どもに矛先を向けています。

 やっぱり、ママ友同士はあまりにも身近な存在になると危険。経済的な序列に気付かされ、競争心や嫉妬が芽生える場合もあるし、自分が上位にいると気が付けば相手を見下した態度をとってしまう場合もある。そうした意味では、男性同士とは違う「親密で複雑」な関係にあるのがママ友同士です。

 だけど見方をマクロな視点に変えてママ友関係を俯瞰すると、社会の経済格差や出自の格差がそのままママ友同士の序列を形作っているという意味では、日本の構造的な問題がママ友問題に波及しているとも言えるでしょう。

ファッションや髪型も序列の対象になるものの、序列の核心はやっぱり出自と夫の職業かも。

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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