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小池百合子 VS 蓮舫 ―東京都知事選挙、オンナの戦いは何をもたらすか

2024年6月20日告示、7月7日投開票の東京都知事選に向け、立憲民主党の参議院さん議員・蓮舫が出馬を表明しました。蓮舫の出馬は、現在の「小池百合子一強」といわれる東京の地方政治を、どのように変えるのか、変えないのか。壮大な視点ではありますが、東京都知事は日本国全体にも影響を及ぼす立場ですので、大きな流れを掴み、誰が適任であるかを一緒に考えていきましょう。

!注目ポイントその1 政治システムと「相乗り」現象 

地方議会のシステムというのは、予算編成権を持っている首長(知事・市区町村の長)と首長に対するチェック機能を有する議会がそれぞれ直接選挙で選ばれる「二元代表制」と呼ばれる政治システムで運用されます。首長の権限は絶大であり、議会側は都知事の予算編成や政策立案を支持する立場をとる「与党」と、支持しない立場をとる「野党」とに分かれています。

都議会の「与党」は自民党・都民ファ・公明で、「野党」が、立憲・共産・その他です。地方政治では異なる政党同士が協調し合う、いわゆる「相乗り」現象が見られますが、これこそがまさしく、国政政治とは異なるロジックで動くことから地方政治のダイナミズムといえましょう(こうした「相乗り」現象に対処するため、多くの首長は政党を名乗らず「無所属」で立候補します)。東京都議会では、「与党」対「野党」の構図が大体、76議席 対 33議席ですので、圧倒的に「与党」(小池派)が有利です。

!注目ポイントその2 イデオロギー対決

自民・都民ファ・公明は、保守・中道路線です。これに対して、立憲・共産はリベラル路線です。この対立構造は、国家観はもとより政治理念や政策の違いを鮮明に打ち出します。その意味では、この都知事選は、55年体制下での「保守・革新対立」に近い(ただしは55年体制には「相乗り」ではなく自民党と社会党の二大政党制がありました)。

具体的に、「保守」は、経済成長、公共事業の拡充、農業漁業支援など、保守的な社会政策を重視するのに対し、「革新」は、社会福祉の充実、環境改善、人権・平等など、「個人」を基軸にした社会政策を強調します。ですから「与党」が勝利すれば、現状維持の路線がとられ、「野党」が勝利すれば、福祉充実や格差是正といった、より進歩的な政策へと路線が変更されるでしょう。

当然のことながら「保守」と「革新」では、支持する有権者の属性にも違いがあります。「与党」の支持者には、伝統的に高齢者、財界の経営者層、右寄りの有権者が多く、公明党には創価学会の強力な支持基盤が加わります。一方「革新」の支持者には、学者・研究者・有識者、若年層、労働者、社会正義や平等や環境問題に関心を持つ有権者が多いです。東京都の場合、「革新」の視座に立つ有権者も多いことから、蓮舫がこれらの支持者層にどれだけ食い込んでいけるかが非常に大きなポイントとなるでしょう。

!注目ポイントその3 ジェンダー対決

そして最後に、「オンナの戦い」という視点から、小池と蓮舫の違いを見ていきましょう。小池の場合、「初の女性東京都知事」「初の防衛大臣」、もっというと(事実かどうかは別として)「初の日本人カイロ大学卒業生」といったふうに、女性のパイオニアであることを常に強調してきました。これに対し蓮舫は一貫して権力や既得権への監視という立場を崩さず、権力に対する批判を政治のアリーナから発信し続けてきました。

ジェンダーの視点を導入すると、女性でありながら男性の分野に進出し男性を利用しながら権力の座に上り詰めたのが小池であるならば、女性や弱者や若者の立場から既存の権力構造を覆そうとしてきたのが蓮舫です。どちらを支持するかは、属性や社会的立場や好みなどがあろうかと思われますが、本来ならば女性政治家というのは、どうしても権力の外側から既存の権力を批判し監視し、そして変えていくという立場に立ちやすいという特徴があります。

以上、とっても雑駁ではありますが、3つの視点から都知事選の動向を分析してみました。皆さんも、都内にお住まいならば必ず選挙にはいきましょうね!

東京都公式HPより

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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