投資詐欺に遭った方から探偵ファイルに寄せられたメールを読み、改めて、被害に遭われた方々が「探偵ファイル」の情報発信によって新たな一歩を踏み出すことを決意するという側面を理解しました。
なによりも矜持を正さねばと感じたのは、探偵は、既存の制度や組織から「扱うことのできないもの」として処理されてきた様々な「泣き寝入り案件」の救済者となりうるということです。これまであまり議論されてきませんでしたが、探偵の存在意義はあくまでも被害者の視点に立つことであり制度の隙間を埋める救済者になることなのだと確信しました。それこそがまさしく被害者と探偵との「信頼」なのではないでしょうか。
私が知る限り、警察に取り合ってもらえない詐欺事件にはいくつものパターンがあります。最も典型的なパターンは金額が「少額」である場合です。貸し借りのトラブルは警察が個人間の民事問題とみなし介入を避けるからです。金額は少額でなくても、相手の故意性や悪意を示す証拠が不十分な場合や被害届が複数出ていない場合も動いてくれません。警察は組織的な詐欺を重視するため、被害者が1人だけの場合には対応を後回しにすることがあります。加害者の手口があまりにも巧妙な場合も、「具体的な事実関係をもっと整理してから相談してください」と追い返されてしまうことがあります。警察は組織的に官僚文化が根付いているため、いくら士気の高い捜査官がいても(刑事ドラマのように)単独で捜査に乗り出すことはできないのです。
こうした状況から「泣き寝入り」を強いられる被害者がとても多いことは理不尽ですし、本当に日本は「加害者」に優しく「被害者」に冷たい国だなあと実感することも一度や二度ではありません。これからも女探偵として、闇に埋もれた事実を照らし出し、困難を突破するための確かな一歩を進みたいと思う次第です。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。